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2022年09月06日

糖尿の気があるのに放置…糖尿病性神経障害の恐れ

血糖値が高いのですが最近足先が痺れます…。

67歳の男性です。実は私は昔から糖尿の気があり、勤めていた会社での健康診断でも、たびたび再検査をすすめられていました。
ですが、とくに体に変わったことはなく、再検査をするのも、治療をするのも、忙しくて放っていました。
会社を辞めて時間ができたので、あらためて健康診断を受けたところ、やはり血糖が高くて薬による治療をはじめました。
ところが最近、足先や足の裏がよく痺れるようになりました。薬による治療を始めてから1年くらいになるのですが、これは薬の副作用なのでしょうか。

答え

血糖値をコントロールしこれ以上悪化をさせないように

今回は糖尿病の治療をしている方が、足にしびれを感じるというご質問です。以前より血糖が高かったと指摘されていたという事ですので、比較的長い期間、高血糖の状態が続いていたのだと思います。

薬の副作用を心配されているようですが、実は、糖尿病が進行した際に、足のしびれなどの神経障害が起きてくることが知られています。糖尿病は、血液中の糖の濃度が高くなる病気ですが、その状態が長年続きますと、それによってさまざまな組織への障害が起きてしまいます。

よく知られているのが血管に対する障害です。動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞になりやすくなります。さらに糖尿病は、長年かけて神経障害を起こすことも知られており、これを糖尿病性神経障害と呼びます。

糖尿病で神経がやられる場合、まず足先の感覚が低下したり痺れたりすることが多く、場合によっては筋力が低下したりもします。さらに自律神経も障害を受け、身体の様々な調整機能が悪くなります。

たとえば起立性低血圧や、消化管の運動機能の調整も悪くなることで、下痢や便秘などの症状も出たりします。このような神経障害は、ゆっくりと進行するので、糖尿病と診断された後、血糖のコントロールが悪いと、その分発生しやすくなります。

あなたの場合は、健診で以前から指摘を受けていたのに、その間治療をしていなかったことで、このような症状が出て来たと考えられます。

糖尿病の方は、足に出る症状にはとくに注意しなければなりません。足の血管が動脈硬化を起こして血流が悪くなると、最悪の場合は足の壊死にも繋がります。たとえば、足の神経の感覚が弱まった状態で、冬に湯たんぽを足元に置いたりしますと、その熱さに気づかず、低温やけどを起こしたりするケースがあります。すると感染症を引き起こしたり、壊死を起こして足を切断しなければならなくなるのです。

治療を続けていただき、血糖を良い状態でコントロールをしたとしても、一度進んでしまった神経障害は、残念ながら改善することはありません。しかし、だからといって放置してしまうと、より症状が悪化し、大変つらい状況になりますので、しっかりと血糖値をコントロールして、これ以上悪化をさせにくくすることを考えてください。

また、薬による治療に加えて気を付けなければならないのは、足の清潔を保ったり、なるべく傷をつけないようにすることです。傷をきっかけに感染症を起こす可能性がありますので、フットケアというものが非常に重要なのです。

今回のようなケースの場合、足のしびれの原因は糖尿病によるものというのが最も可能性が高いものですが、念のため、それ以外の原因も考えるべきです。たとえば、変形性腰椎症や、腰にヘルニアがある場合などで神経が圧迫され、足先に障害が起きていることもあり得るので、一度は整形外科などで見ていただくことも必要でしょう。

 

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髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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