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医療と健康

2022年05月27日

「尿検査」から体の様々な異常が分かります。

我々人間は一日数回、必ず排尿を行う。普段から健康的な生活を送っているならば気にとめることはない自分の尿。健康診断では必ずといってよいほど尿検査が行われるが、それは血液検査と同様、尿にはその人の体の、様々な健康状態が反映されるからである。今回は、自分の尿からどのような体の状態、あるいは病気などが分かるのかをまとめてみたので参考にしてほしい。

尿が作られるしくみ

人間の体の70%は水分であるということを聞いたことがあるだろう。我々の体の中を流れる血液も当然水分だ。水分は毎日必ず補給しなければならないものだが、それと同時に、排尿も必ず行わなければならない。排尿することによって、体の中に溜まった不要なものを体外に排泄するためだ。

では、尿はどこで作られているのか。そもそも尿とは何であるか。

尿は血液を素にして腎臓で作られる。腎臓は、空豆の形をした臓器で、腹の両側に二つついている。腎臓は「ネフロン」と呼ばれる微細な構造の集まりで、腎臓一つに100万個以上のネフロンがある。ネフロンは、毛細血管が毛糸玉状に巻かれた構造になっており、これを糸球体と呼ぶ。

血液が腎臓の中に流れ込むと、この糸球体によって血液から水分がろ過される。その量は一日におよそ100~150リットルにも及び、これを「源尿」と呼ぶ。

腎臓にてろ過された源尿は、そのまま排泄されるわけではない。糸球体によってろ過された源尿は、すぐ隣にある尿細管という部分を通るのだが、そこで水分の99%程と、その他、体に必要とされる成分が再吸収される。その後尿は、腎臓から尿管を通って膀胱に溜まり、200ミリリットルほどの尿が溜まると膀胱の内圧が上がり、「尿をしたい」という信号が脳に送られるのだ。そして最後は尿道を通って排泄される。最終的には源尿の約1%、一日に1リットル~1.5リットルほどの尿が排泄されることになるのだ。

尿からわかる様々な体内の異常

では、健康診断などで行われる尿検査によって、体のどのような異常が分かってくるのだろうか。

尿検査は一般的な健康診断で広く実施される。本誌読者のほとんどの方も実際に検査を受けたことがあると思うが、紙コップ、あるいは専用の容器に少量の尿を入れ、提出するものだ。

尿検査では、尿の中に含まれる成分を分析し、本来、健康な人の尿には含まれないタンパク質や糖、などの存在を発見できる。おもに腎臓や膀胱、尿路系にまつわる病気、さらに糖尿病や肝臓病などの発見に繋がるのだ。

では、実際の尿検査ではどのような項目がチェックをされるのかをまとめて紹介しよう。

■尿の色
まずは尿の外見について。正常な尿は、ご存知のように薄い黄色をしている。水を沢山飲んだ場合には、ほとんど水と同じ透明な尿が出ることもある。肝臓を悪くし、いわゆる黄疸の状態になると尿は濃い黄褐色になる。尿管や尿道、あるいは膀胱などで出血があると血尿が出る。ビタミン剤を飲んだ後に、濃い黄色の尿が出ることがあるが、これは異常ではなく、不要になったビタミンが尿より排泄されたためである。

また、尿の濁りにも注意が必要である。通常、尿は透明であるが、濁っている場合には尿路系に炎症が起きていたり、細菌に感染している可能性などが疑われる。

■尿の量
次に尿の量について。尿は一日に1リットルから1.5リットルの量が出るという。脱水、嘔吐、下痢、あるいは発熱などで、体の中の水分そのものが少なくなったような場合に尿量は少なくなる。それから腎臓での尿の濾過機能が低下している場合、または結石や腫瘍などで、尿の通り道が狭くなってしまっているような場合も尿量低下の原因となる。いずれも健康状態の異常を示しているのだ。逆に尿量が多場合、たとえば一日に2.5リットル以上の排尿がある場合など、これは心因性のもの、あるいは糖尿病などが疑われるという。

■尿の比重
そして尿の比重について。これは尿量との組み合わせによって様々な疾患を推測することが出来る。たとえば基準よりも高い比重で、さらに尿量も基準より多い場合、糖尿病が疑われる。尿の比重が高く、尿量が少ない場合には脱水、熱精疾患によるものと予測できる。一方で、比重が低く、尿量が多い場合。これは水分の過剰摂取が原因と考えられる。比重が低く、尿量が少ない場合には腎障害が疑われるので要注意なのだそうだ。

■尿のpH
尿のペーハー(pH)、つまり尿が酸性かアルカリ性かを調べる検査もある。通常のペーハーは5~8くらいであるが、食べ物の嗜好によって異なり、肉類を多くとると酸性、野菜を多くとるとアルカリ性になるという。尿が酸性の場合、腎炎、糖尿病が疑われるが、発熱や下痢でも酸性となる。一方でアルカリ性の場合は、尿路感染症が疑われる。しかしこれらの病気がある場合には、痛みなどの自覚症状もあることが多いので、尿のペーハー値のみで病気を判断されることは無いという。

■蛋白が出た場合
次に蛋白が出た場合。発熱や、激しい運動をした後など、一過性に蛋白がでることもあるが、急性腎炎、慢性腎炎、膀胱炎、尿路結石などの可能性もあるので、早急に精密検査が必要である。

■糖が出た場合
そして糖が出た場合。血液中に含まれる糖は、糸球体によってろ過された後、尿細管にて全て再吸収される筈なので、通常は尿から糖が検出されることはない。尿に糖が出る原因は二つ。まず血液中の糖が多すぎて、尿細管にて再吸収しきれない場合だ。いわゆる糖尿病である。もう一つ、尿細管の再吸収の量が落ちている場合、これは腎機能の低下、尿細管での再吸収能力に障害があると考えられる。

■潜血反応が出た場合
尿に潜血反応が出た場合。腎臓、あるいは尿路系からの出血が考えられる。ただしこの検査だけで出血部位を特定することは出来ないので、精密検査として腎盂造影あるいは超音波検査等を行う必要があるという。

■ケトン体が検出された場合
最後に、尿中にケトン体が検出された場合。これは糖の代謝に異常があることを示しているという。糖尿病、あるいは激しい嘔吐、下痢、それから長期の糖質の制限、つまり過剰なダイエットを行った際などにケトン体が出るという。

これまで、自分の尿を観察するということはなかっただろう。しかし、尿の色や濁り、量などは、自分自身で注意することが可能なもの。異変を早期に発見するためにも、ぜひ以上のことを参考にしていただきたい。

髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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