医療と健康
鼠径ヘルニアは手術をせず治せますか?


鼠径ヘルニアの手術が不安…
以前より、股関節の少し上あたりがつっぱるような感じがありました。指で触ってみるとシコリのようなものもあり、がんではないかと心配で病院で診ていただいたところ、鼠径ヘルニアとの事でした。
詳しい検査はこれからなのですが、その結果、もし症状が軽ければ日帰りの簡単な手術で治すことが出来るとの話でした。ですが、これまで一度も手術を受けたことがなく、不安もありますし、年齢も年齢のため、できれば手術をしたくありません。
鼠径ヘルニアは、そのままにして自然に治らないのでしょうか。放置するとどうなるのでしょうか。また、手術はどんな事をするのでしょうか。

時機をみて手術を
腹部の筋力低下も一因
今回は鼠径ヘルニアについてのご相談です。
鼠径ヘルニアは幼児期に発症するケースが多くありますが、中高年以降に起きるものもあります。
「ヘルニア」とは、もともと「飛び出す」という意味をもつ言葉です。たとえば腰椎椎間板ヘルニアという病名もお聞きになったことがあると思いますが、これは腰椎と腰椎の間にある椎間板が飛び出して、それが神経に当たるなどして痛みがあらわれるものです。
鼠径ヘルニアというのもやはり「飛び出す」という意味で、本来お腹の中にあるべき腸管などの臓器が「鼠径管」という穴を通じて、皮下へ飛び出してしまう病態になります。
この「鼠径管」という穴は男性のほうが太い傾向にあるため、鼠径ヘルニアは男性に多い病気です。慢性の便秘や肥満などでお腹の内圧が上がったり、高齢化により腹部まわりの筋力の低下が起きると発症しやすくなります。
もちろん女性でもヘルニアは起きますが、男性とは少し場所が異なる場合が多いです。太腿の付け根にある大腿管という所を通じて皮下へ出てきてしまう大腿ヘルニアというものです。
それ以外にも、お腹の手術をした方などは、手術の跡の弱くなっている部分から飛び出してしまう腹壁瘢痕ヘルニアというものもあります。
このように腸管は色々な場所から飛び出してしまうことがありますが、腸管が飛び出してしまったとき、それが比較的スムーズに元に戻る場合には大きな問題にはなりません。
しかし、一番怖いのは外へ出てしまって、そのまま戻らなくなり、なおかつ「嵌頓」という締め付けられた状態になってしまうことです。これを「絞扼性嵌頓ヘルニア」といい、締め付けられるため血流が途絶えやすく、その部分が腸閉塞を起こしたり壊死してしまうこともあります。
患部は硬くなり、非常に強い痛みを感じ、この場合は緊急に手術をしなければならない状況です。
この絞扼性嵌頓ヘルニアでないかぎり、そう危ない状況ではないため緊急な対応は不要なのですが、自然に治すというのは難しいため、時機を見て手術をしてしまうのが一般的です。
手術は、穴の開いている部分を人工メッシュで覆ったり、自分自身の体組織を使用して穴を塞ぐなどして、腸管が外へ出てこなくする方法などがあります。
他の病気の影響で、どうしても手術を行えない場合などはそのまま経過観察をするということもありますが、そうではない場合、とくに高齢者では嵌頓を起こしてしまうことも多いため、担当の医師にもすすめられているのなら、ぜひ手術を受けてみて下さい。
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- 髙谷 典秀 医師
- 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事
【専門分野】 循環器内科・予防医学
【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士
【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)
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