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医療と健康

2023年05月09日

肝臓がんの早期発見のために。「超音波」「CT」「MRI」検査の基礎を解説

老友読者には、お酒や煙草が大好きで、なかなかやめられないという人も多くいるだろう。そのような人のなかで、お腹が張った感覚がある、疲れやすい、いつもだるいなどの症状がある人はいないだろうか。もしかすると肝臓の働きが低下してきているのかもしれない。肝臓にまつわる病気というのは、なかなかはっきりとした症状が出にくいもの。日頃からの生活習慣の見直しや、定期的な検査を行って、肝がんなどを未然に防ぐ、あるいは早期発見に繋げたいものだ。今回は肝臓がん早期発見のための様々な検査法を紹介しよう。

肝臓の3つの役割

以前より紙面上にて紹介をしているが、肝臓というのは「肝心要」という言葉どおり、生きるためにとても大切な役割を担っている臓器だ。1.3~1.5キロほどもあり、人間の体の中で最も大きく、様々な仕事をしている。

肝臓の役割は大きく分けて3つある。必要な栄養分の合成、貯蔵、そして体内の有害物質の解毒である。我々が食事として体内に取り込んだ食物は、胃や腸で吸収された後、肝臓に運ばれる。肝臓はそれらの栄養素を合成して、体内で利用できるような成分に変えてくれるのだ。そしてそれらの成分を血液に乗せて全身へ行き渡らせる。また、それらの成分を肝臓の中に貯えることもできる。

さらに、体内で発生した不要な物質や毒素なども、血液に乗って肝臓へ運び込まれる。たとえばお酒を飲んだ場合、アルコールというものは体にとっては毒素である。血液の中に吸収されたアルコールを、肝臓は無害な状態にまで解毒、分解をしてくれているのだ。 
このように様々な役割を担っている肝臓は、24時間、たとえ夜、眠っている間でも休む間もなく働き続けているのだ。とくにお酒が好きで、毎日晩酌をしている人の場合は、肝臓へかかる負担も大きなものとなる。このような話を聞くと、やはり働き者の肝臓のために「休肝日」というものを設けてあげたくなる。

さらに肝臓というのは「物言わぬ臓器」と呼ばれることもある。病気になっても働き続けて、痛みなどの症状が出る頃には、すでに肝炎から肝硬変、そして肝がんへと進行してしまっていることがほとんどで、そうなると手の施しようがないという。

定期的に健診を受ける
異常があれば必ず再検査を

症状が現れにくい肝臓をがんから守るためにも、まずは、定期的な健康診断をきちんと受診することだ。そして血液検査等で異常が見つかった場合に、必ず病院で再検査を受けること。

肝臓の病気を検査する上でもっとも一般的で、簡単に行うことができるのが超音波検査であり、受診したことのある人も多いであろう。超音波検査とは、人の耳には聞こえない音波を体内に向けて出し、跳ね返ってくる音波の強弱などを捉え、画像にして映し出す検査であり、価格も安く、手軽に検査ができるため導入している病院は多い。肝がんではなく、たとえば脂肪肝なども、細胞一つ一つに貯えられた脂がきらきらと光るように観察されるので判別が可能という。

脂肪肝をそのまま放置してしまうと、慢性肝炎、肝硬変、そして肝がんへと進行するので、脂肪肝の段階で発見し、対処をしたいところだ。また、たとえ肝がんであっても、腫瘤が1つだけで、他の臓器に転移が無く、大きさも2センチ以内程度の初期であれば、今の医療でほぼ治療できるとのことだ。

しかし超音波検査にも弱点はある。早期発見をしたくとも、小さな病変を見極める事は難しく、さらに検査技師の技術にも影響されるという。また、患者の体の状態にも影響されるそうで、肥満気味でお腹が出ている人や、お腹に過去の手術跡が残っているような人の場合、超音波が通りにくく正確な検査ができない。

次にCT検査について。CTはベッドに横になり、ドーナツ型の機器の中へ入り込み、撮影をするもの。原理はX線検査と同じで、放射線を体内に向けて照射し、放射線が通りやすい部分と通りにくい部分の差を映し出すものである。X線検査と異なるのは、カメラがドーナツ型の機器をぐるぐるとまわるようにして、360度の撮影を行う。そして撮影データをコンピュータで処理することで、体内をあらゆる方向から観察することができるのだ。超音波検査と比べて、体の隅々まで撮影をするので客観性があり、死角もない。

しかしCT検査にも欠点がある。CTで肝臓がんの検査を行う場合には、より病変を見つけやすくするために造影剤を利用することが多いのだが、まれにアレルギーなどの副作用を起こすことがあるそうだ。そして一番の問題は放射線被曝である。360度、あらゆる角度から撮影するために、被曝量は通常のX線検査の10倍ほどになるそうだ。それでも最新のCTでは被曝量を減らす技術も発達しているという。

次にMRI検査について。CTよりも少し狭い、奥行きが深いトンネル型をした検査機器である。CTと同じようにベッドに寝て、トンネルの中に入り込んで撮影を行う。MRIの原理は非常に難しいのだが、簡単に説明をすると、強力な磁場を利用して、体の中の水素原子、つまり水を捉える検査である。そのため放射線は使わないので、被曝の心配がない。MRIでは骨に遮られることもなく綺麗な画像が得られる。

MRIの欠点としては、強力な磁場をかけるために、体の中に金属部品を埋め込むような手術をした人や、ペースメーカーを埋め込んでいる人は検査をすることができない。また、検査には2~3分、長い場合には十数分かかることもあり、その間、大きな音を出す狭い機器の中でじっとしていなければならない。途中で動いてしまうと、鮮明な画像を得られなくなってしまう。

早期発見の為に大切なのは、とにかく定期的な健康診断を怠らないという事のようだ。そして少しでも異常がみられる場合には、まずは超音波検査だけでも良いので検査を行うこと。そして一番大切なのは、働き者の肝臓を普段から労ることだ。お酒の飲みすぎには十分注意したい。

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