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2020年11月30日

体全体が衰え虚弱化する心身のフレイル~その克服と予防策

「フレイル」とは、高齢者の心身が虚弱(衰えた)となった状態であり、「健康で元気な状態」と「要介護となってしまう状態」の中間地点にいる状態ともいえる。先月号では口腔機能の虚弱について話したが、フレイルは口腔だけではなく身体全体、そして心にまで影響を及ぼすものである。今月は、身体面、精神面、社会面に及ぼす影響やフレイルの予防についてお話ししよう。

コロナ禍、巣ごもり生活で
運動不足、認知症の症状に

9月21日の敬老の日に合わせ、総務省が65歳以上の高齢者の人口推計を発表した。9月15日時点で前年比30万人増の3617万人となり、総人口に占める割合も28・7%と過去最高となった。また、70歳以上の割合は22・2%、女性に限ると25・1%、実に4人に1人の女性が70歳以上となった。さらに100歳以上の高齢者は前年より9千人増の8万人越えで、そのうち9割が女性だという。高齢者就業者数も16年連続で増加し892万人。総就業者全体に占める割合も13・3%と過去最高になった。
文字どおり高齢者大国の日本。衰えた高齢者を健康な若い世代が支えるというピラミッド図式は遠い過去の話であり、今は高齢者が高齢者を支えなければならない。そんな時代を生き抜くためには、やはり心身ともに健康を保つこと。先月号では、オーラルフレイル(口腔の虚弱)についての話をご紹介したが、今月は体全体のフレイルについて取り上げる。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、外出の機会が減ってしまったという方が多いだろう。春のお花見、そして夏のお祭りや花火大会など様々なイベント・行事が中止となり、またカラオケや会食、飲み会なども感染拡大のリスクが高いとされている中では、どうしても自宅に閉じこもりになってしまう。
だが、そのような閉じこもりや他人との関わり合いが少ない状態を長く続けていると、運動不足になったり、心や脳への刺激もなく、心身ともにフレイル(虚弱)の状態になってしまい、やがて介護が必要になるまで体が衰えてしまったり、認知症になってしまったりする可能性が高まる。
一方で、フレイルの段階であれば、早期に生活習慣を改善するなど対策を行うことで身体機能の回復が十分見込まれる。
生活習慣を見直し、運動を取り入れ、バランスの良い食事などを心掛けて栄養改善などを実践することで健康で元気な状態に戻る可能性が高いのだ。

生活の質(QOL)が低下へ
フレイルの3つの要素「身体・精神・社会的」

フレイルは、図1に示すように「身体的なフレイル」「精神・心理的なフレイル」、そして「社会的なフレイル」の3つの要素が関わっている。
身体的フレイルでは運動器全体の機能低下となるロコモティブシンドロームやサルコペニア(加齢性筋肉量減)などが代表的な状態であり、精神・心理的フレイルにはうつや認知症、さらに社会的フレイルには閉じこもりや独居(孤立化や孤食化)などの状態が現れる。これら3要素が絡み合い、QOL(生活の質)の低下を招くのだ。身体的フレイル診断フレイルの3つの要素の中でも特に高齢者の衰弱、要介護状態を進行させるのが身体的なフレイル。身体的なフレイルかどうかを診断するのには、表1に示した5項目の質問に答え、読者の皆さんもチェックしてみてほしい。これら5項目のうち3項目以上に当てはまるようであればフレイルの可能性が高い。1~2つ当てはまる場合はフレイル予備軍といえる。

フレイル予防に3つの柱
「栄養」「運動」「社会参加」

このフレイルを予防するには、健康長寿の3つの柱と呼ばれる「①栄養」「②運動」「③社会参加」について、それぞれバランスよく対策を行うことが重要である。
①栄養
口腔機能を維持し、毎日バランスの良い食事をとること。口腔機能の維持については先月号で詳しく解説したので参考にしてほしい。バランスの良い食事とは、糖質やたんぱく質に偏らず、主食(米、パン、麺類など)、主菜(肉、魚、卵、大豆製品など)、副菜(野菜、海藻、きのこ類など)、そして汁物(野菜や海藻を取り入れた味噌汁など)を毎食バランスよく取り入れること。
②運動
毎日の食事の支度や掃除、洗濯なども運動になる。また晴れた日は外へ出てウォーキングをすることで、体力の維持はもちろん、適度な体への刺激と日光浴効果で骨粗しょう症を予防できる。また筋力の低下を防ぎ、バランス感覚も養われるため転倒・骨折・寝たきりの予防にもつながる。
③社会参加
町内会や老人クラブ、ボランティアなどの活動には積極的に参加し、地域の人や友人との交流を増やすこと。もちろん作句や絵画、音楽、編み物など趣味の活動でもよいし、無理のない範囲での就労でもよい。他人と繋がり、責任が生じる活動を行うことで自信とやりがいが生まれ、うつや閉じこもりを予防できる。

高齢者であればフレイルになる可能性がある。早めに自分自身で気づきと心構えを持ち、適切な対策をして健康長寿に繋げていただきたい。

 

高谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 /医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック健診協会 理事

    日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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