高齢者のための情報サイト【日本老友新聞】

老友新聞
ルーペ

医療と健康

2021年09月24日

健康ということ

私は、1957年(昭和32年)に長野県佐久市という所で生まれました。地元の高校を出て、大学4年間を東京で過ごし卒業後、地元のJA長野厚生連佐久総合病院に就職し、定年までの38年間を佐久総合病院薬剤部の薬剤師として仕事をしてきました。

みなさんは、長野県というと何を連想されるでしょうか?「山岳地帯」「雪国」「極寒地」「軽井沢、あずみ野、諏訪大社、温泉、スキー場」「高原野菜」……等々でしょうか。
長野県は隣接する県が全国で一番多い県です。新潟、群馬、埼玉、山梨、静岡、愛知、岐阜、富山と8県と接しています。南北にも東西にも広いため、県内でも気候や風土や文化がかなり違います。「長野は雪がいっぱい降って寒いでしょ」とよく言われます。確かに私の住んでいる佐久でも雪は降りますが、新潟や富山県境のような豪雪地帯ではなく、10~20㎝の雪が数回降る程度で、その代わり豪雪地帯より寒く、真冬は-10℃位は当たり前の地域です。

そんな山深い、雪の多い、寒い信州ですが、平均寿命は全国でいつも1、2を争う長寿県です。そして、私の住んでいる佐久市は県内でもトップです。平均寿命がトップになった理由はいろいろあると思うのですが、減塩運動と健康管理活動が大きな要因なのだと思います。信州は全国でも最も野菜の摂取量が多いとされていますが、塩分摂取過多による脳卒中による死亡が多かったため、行政や医療機関が減塩活動と検診を積極的に行ったことによって、1975年以降常に平均寿命が全国トップにいると言われています。

佐久市は医療機関が多く医療に恵まれている地域だと思います。しかし、私のいた佐久総合病院の名誉総長の故若月俊一先生が、東京から佐久に赴任された昭和19年の佐久地域(当時全国の地方の農村は皆そうだったのでしょうが)の生活環境は劣悪で、医療も乏しく大変な状況であったようです。そこで、診療が終わった後、職員と村々を回って健康診断を根気強く行い、「自分の健康は自分で守る」ということを伝え続け、それが「検診」という形で全国に広まったと聞いています。若月先生の言葉に「予防は治療にまさる」というものがあります。医療が進歩した今では、多くの病気が治療可能になりました。これからもさらに化学は進歩し、多くの病気を克服していくと思いますが、やはり病気にならないことが肝心だと思うのです。そして、検診を受けて早期に発見することも重要です。

私が子供のころは、特に不自由は感じていませんでしたが、食料は野菜が中心でした。自分の家で作った(我が家は農家ではありませんが畑を借りて作っていました)ものを食す。信州は内陸なので魚介類も乏しく、近所の商店で時々マグロやクジラの粕漬や味噌漬けを買って食すくらいで、新鮮な魚といえば地元名産の「佐久鯉」くらいでした。生野菜は豊富にありましたが、保存食の漬物(野沢菜漬けや白菜漬け)は常に食卓にあったと思います。「そりゃー塩分過多になるよね」って思います。

先人達の根気強い健康管理活動、生活環境を改善するための活動、等々多くの苦労と取り組みが、今の長寿県、長寿の佐久市につながっているのだと思います。

もうひとつ佐久市の大きな特徴は、高齢者の有業率が高い点です。幾つになっても社会の中で、自分の役割を持っているということはとても重要だと、64歳になった今つくづく思うのです。家の中だけでなく、社会の中で自分が生かされていること、自分がお役に立てていること、社会とつながりを持っていること、これが健康の秘訣なのかもしれません。
これからも自分の健康は自分で管理して守り、健康に感謝し、社会に感謝して生きていけたらと思うのです。

佐久市にある成田山薬師寺の「ぴんころ地蔵」

油井 信明 教授
  • 油井 信明 教授
  • 日本薬科大学 薬学部薬学科 教授
  • 北里大学薬学部卒
  • JA長野厚生連佐久総合病院統括薬剤部長を経て現職
    実務教育を担当
  • 日本薬科大学 公式サイト
    https://www.nichiyaku.ac.jp/

この記事が少しでもお役に立ったら「いいね!」や「シェア」をしてくださいね。

高齢者に忍び寄るフレイル問題 特集ページ

健康への不安や悩みはありませんか?

健康にまつわるご相談を募集しております。医療法人社団同友会理事長がわかりやすくお答えをいたします。

読者投稿の募集はこちら


日本老友新聞・新聞購読のお申込み
日本老友新聞・新聞購読のお申込み
  • トップへ戻る ホームへ戻る