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2024年09月17日

夏場の冷え性予防・改善策

毎日暑い日が続いている。先月は熱中症に関する話を紹介したが、一方でこの時期、エアコンが冷えすぎて困っているという人もいるのではないだろうか。とくに高齢者は冷え性になりやすく、自宅でも外出先でもエアコンが寒すぎると感じている方が多いことだろう。今月は「夏場の冷え性」について詳しく説明し、その改善策についても紹介しよう。

急激な温度変化で変調
体温調節ができず自律神経乱れる

暑い夏に「冷え性に注意」と聞いても、あまりピンとこない人が多いかもしれないが、とくに高齢者は夏こそ冷え性に注意をしなければならない。

夏に冷え性になる原因の一つは、やはり冷房だ。たとえば暑い屋外と冷房の効いた屋内との間を何度も出入りを繰り返したりすると、体温を調節してくれている自律神経が乱れてしまうのだ。とくに高齢者はもともと体温調節能力が低下していることもあり、このような急激な温度変化によって体温調整が効かず、冷え性の症状が現れやすいのだ。

また、エアコンの効きすぎている場所に長時間居続けていると、とくに手足の先や冷房の風が直接当たる場所などの体温が下がり、血行が悪くなることで体に負担がかかり、さらに冷え性を引き起こすことがある。

冷たい食べ物、飲み物の摂りすぎにも注意が必要である。暑いとつい、冷たい飲み物や食べ物を口にしてしまうが、冷たいものを取りすぎると胃腸が冷え、その働きも低下してしまい、食欲不振、体力低下に繋がってしまうのだ。そうなるといわゆる夏バテと言われる状態になり、さらに自律神経が乱れて冷え性の症状が進んでしまう悪循環に陥ってしまうのだ。

さらに高齢者の場合は、若い人と比較するとどうしても筋肉量が低下している。筋肉は体の熱を生み出してくれる働きがあり、その筋肉量が低下している高齢者は冷え性になりやすいのだ。

冷え性が進むと、体に様々な悪影響を及ぼす。まず体が冷えると免疫機能を低下させてしまい、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなる。また、体温が低下することで血管が収縮し血流が悪化するため、頭痛や肩こり、腰痛、関節痛、下痢、便秘などが生じることがある。

予防・改善のポイント

では、冷え性の予防、改善のポイントをまとめてお伝えしよう。冷え性を予防するには生活習慣の改善が重要だ。

■食事による冷え予防
まずは食事。夏はつい、冷たい物ばかりを食べたり飲んだりしてしまうが、バランスの取れた食事、とくに体を温める効果のある食品や飲み物を積極的に摂取するとよい。例えば生姜やにんにく、ねぎ、ニラ、そして唐辛子やコショウなどのスパイス。そして暑い夏こそ温かいスープや鍋なども日々の食事に取り入れていきたい。また納豆や漬物などの発酵食品は血流や代謝を高める作用があると言われている。

また、欠食はせずに1日3食しっかりと食べるようにしよう。とくに朝食を取ることは、夜寝ている間に下がった体温を温めるために重要な役割を果たす。

■運動での冷え予防
次に運動。適度な運動も冷え性予防に効果的である。体を動かすことで血行を促進し、体温調節機能を向上させる。とくにウォーキングなどの有酸素運動やストレッチがおすすめだ。とくに高齢者は、運動をしないでいるとすぐに筋力が衰えてしまうため、熱を生み出す役割を果たす筋肉量を維持するためにも運動習慣は大切。ただし今の季節は、日中屋外での運動は熱中症になる危険があるため注意が必要だ。

■冷房の調整
夏場において、高齢者は室内でも熱中症になる恐れがあるので、日中はもちろん、夜中でもエアコンの利用は大切だが、温度設定などが適切でないと体を冷やしてしまう。

エアコンの設定温度は28度程度、そして外気温との差を5度程度に保つのが適切と言われている。

夜眠る時にエアコンを使用する場合、深夜の時間帯は外気温も徐々に下がってくるので、その頃に寒さで目が覚めてしまう事があるだろう。その場合はタイマー機能をうまく利用しよう。また、布団をなにもかけずにエアコンを使用して眠ると足やお腹を冷やしてしまうので、1枚毛布をかけて眠るようにしよう。

■服装で調節
外出先など、エアコンの設定温度を調節することが出来ない場合もある。とくにスーパーの冷蔵・冷凍食品の売り場は冷気が強く、買い物中に体が冷えるとお悩みの方も多いだろう。

そのような場合には自分自身の服装で調整するしかない。そのような場所へ行く際には、寒いと感じたらすぐに着ることが出来るカーディガンなどを1枚カバンの中に入れておくと良い。喫茶店や映画館など、長時間動かずに座ったままとなるような場所も冷えを感じやすいので、ひざ掛けやストールなどを用意して冷え対策をしよう。

とくに温めたいのは、首・手首・足首の「3つの首」である。いずれの部位も筋肉や脂肪が少なく、皮膚のすぐ下を太い血管が通っているため、この3か所を温めることで全身が温まるという。これらの部位は、夏は露出させていることが多いだろう。ネックウォーマーやアームウォーマー、レッグウォーマーなども活用するのをおすすめする。

■湯船につかる
夏場の風呂はシャワーだけで済ませてしまう人が多いと思われるが、冷え性で悩まれている方は、夏でも湯船につかると良い。40度程度の、少しぬるめと感じる程度の湯船にゆっくりと浸かることで血流が改善し、疲れも取れてリラックス効果も得られるのでおすすめだ。

冷え性予防・改善ポイントを実践していただき、この夏も元気に乗り切って頂きたい。

髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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