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2018年12月25日

薬の種類が多いと危険がいっぱい! 「かかりつけ薬局・薬剤師」と上手に服薬管理

病院で診察を受けて処方箋をもらい、薬局で薬を受け取る…。その後の服薬管理、ご自身でできていますか? 加齢に伴い内科、皮膚科など複数の診療科を受診する人が多くなりますが、心配なのが、薬を多種類処方されることによるリスクです。日本薬剤師会常務理事の有澤賢二さんに、薬との上手な付き合い方を伺いました。

処方薬の種類が多いとさまざまなリスクが!

厚生労働省の統計(※)によると薬局で5~6種類以上の薬を処方されている人の割合は65歳以上で約3割、75歳以上で約4割に。年齢が上がるほど薬の種類が多くなる傾向があります。※「平成29年社会医療診療行為別統計(厚労省)」より、同一薬局で調剤を受けた薬剤の種類(院外処方)。

「6種類以上の服薬は健康被害のリスクがあります。薬の種類が多いと飲み合わせが悪かったり、飲む薬を間違えたり、加齢により薬が効き過ぎることもあります。また、薬が飲みきれないという残薬の問題もあります」と有澤さん。

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この表にあるように、6種類以上の服薬で、有害事象(薬が要因と思われる健康被害。例えばふらついて骨折するなど)や要介護に陥る要因にもなる転倒のリスクが上昇することが分かっています。また飲みきれなかった残薬にかかった費用は無駄になり、私たちのそして国の財布を圧迫します。

薬の種類が多いと心配なこと

1.異なる診療科で同じ薬が処方される。

複数の診療科を受診した際に重複処方(同じ薬を処方)され、気付かずに飲んでしまう危険性があります。

2.薬の飲み合わせが気になる。

異なる診療科で別々の医師が処方した薬。飲み合わせが悪いと事故につながる恐れもあります。

3.薬が飲みきれずに残る。

飲み忘れなどで薬が残ってしまうと、治療上の問題が起きたり医療費の無駄になってしまう。

それでは安全・安心に薬を利用するために、私たちはどうすればよいのでしょう。キーワードは「かかりつけ薬局・薬剤師」。そして「お薬手帳」です。この3つを上手に活用して服薬管理をしましょう。

まずは「かかりつけ薬局・薬剤師」について解説します。

いろいろ相談できる「かかりつけ薬局」をもつ

「かかりつけ薬局」という言葉をご存じですか? 薬についてさまざまな相談ができる身近な薬局のことです。

「以前は診察を受けた医療機関で薬を出してもらう院内処方が基本でしたが、近年は医師が診察後に処方箋を発行し、薬は薬局でという『医薬分業』の体制になっています。診断・処方を行う医師と調剤する薬局により、使用する薬のダブルチェックができるからです」と有澤さん。

かかりつけ薬局をつくるメリットは、薬を一元管理(1カ所でまとめて管理)できること。通っている病院が複数あっても、処方箋を持ち込む薬局を1カ所にすることで、薬剤師はその処方が利用者にとって適切かどうか容易に確認でき、副作用や残薬などの問題を未然に防ぐことができます。

「異なる診療科で出された処方箋に、例えば同じ鎮痛剤が処方されていたらそれを一つに。一緒に飲むと副作用が起きる薬があれば、薬の変更をそれぞれの医師に問い合わせたりします。

また、処方薬をお渡しするだけではなく、薬に関する相談を受けるのも薬局・薬剤師の仕事です。薬が替わってから体調が良くない気がする、飲む薬の種類を減らしたいなど、気になることは相談してください。薬剤師は薬の処方を利用者の担当医に提言するなど、状況に合わせて対応します」

かかりつけ薬局をもつと、薬剤師とも顔なじみになります。身近な存在になることで、例えば認知症の兆候があるなど利用者の体調の変化に気付き、医師に連絡することもあるそう。

自分にとって利用しやすいかかりつけ薬局を見つけて、処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントの相談もするなど、上手に活用しましょう。

「かかりつけ薬剤師」を見つける

「かかりつけ薬剤師」はいわばかかりつけ薬局の発展形で、専属薬剤師がつくというイメージ。毎回同じ薬剤師が担当して薬を一元的に把握し、急な相談ごとも電話で24時間対応してくれます。特に、介護などで在宅での療養が必要になったときにも重要な役割を担います。

「自立支援という観点から地域医療の従事者やケアマネジャーらと、利用者の体調に合った薬を飲む回数や種類、服薬管理のために家族やヘルパーに何をお願いするべきかなどを連携。外出が難しい要介護者の場合は自宅に訪問して服薬の管理や指導もします」と有澤さん。

自己負担(下記参照)はありますが、安全には代えられません。かかりつけ薬局など身近な薬局で相談しましょう

かかりつけ薬剤師の利用は指導料の負担があります

3割負担の人で60~100円/1回

利用者の希望、またはかかりつけ薬剤師をもつ必要があると判断された場合、利用者と薬剤師(薬局)間で同意書をかわします。処方箋の持参1 回ごとに上記の負担が発生。担当者の変更や、途中でやめることも可能。

次の記事「「お薬手帳」は飲み合わせ事故予防のための必須アイテム。持っていくと薬代の節約にも」はこちら。

取材・文/中沢文子


<教えてくれた人>
有澤賢二(ありさわ・けんじ)さん

1964年北海道生まれ。日本薬剤師会常務理事、北海道薬剤師会副会長、国立長寿医療研究センター在宅医療推進会議委員。北海道薬科大学薬学部卒業後、病院・薬局に勤務し、2010年「屯田七条薬局」開局。


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