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2019年08月29日

貧血のシニア世代は注意!血液のがん「骨髄異形成症候群」とは?

猛暑が続くと体がだるく、食欲低下といったことが起こりがちです。そんな症状の原因として「貧血」が隠れているのをご存じでしょうか。そこで、東京都健康長寿医療センター血液内科部長、宮腰重三郎先生に、血液のがんの一つである「骨髄異形成症候群」についてお聞きしました。

貧血が病気のサインのことも。放置しないことが大切

「鉄欠乏性貧血ですね」と医師からいわれて鉄剤を飲み続けても、一向に症状が改善しない人もいます。貧血は、栄養素不足、あるいは胃潰瘍のような慢性の炎症、二つの合併症でも起こりますが、血液を作る細胞の病気でも起こり得るのです。

「シニア世代の貧血は、骨髄異形成症候群という血液の病気のサインのことがあります。骨髄異形成症候群はシニア世代に発生しやすい血液のがんの一つで、患者数は多くないのですが、貧血の原因を調べる中で見つかることがよくあるのです」と宮腰先生は警鐘を鳴らします。

血液には、ヘモグロビンを含む赤血球、血を固める血小板、免疫の役割の白血球があります。これらの血液の細胞を作るもとの造血管細胞に異常を生じるのが骨髄異形成症候群です。

倦怠感や動悸、息切れなどの貧血のような症状も伴いますが、無症状のまま検診の数値異常で見つかる人もいます。骨髄異形成症候群には、血液のがん細胞が急激に増える急性骨髄性白血病へ移行する種類もあり、ハイリスク群には化学療法に加え、同種造血幹細胞移植といって血液細胞を作る幹細胞を移植する治療法が必要になります。

「同種造血幹細胞移植は、ご家族などの血縁者でドナーを探すのが第一歩となりますが、シニア世代の方は血縁者も同世代で難しい。骨髄バンクも時間がかかります。当センターでは2006年から臍帯血によるミニ移植を実施し、予後改善に貢献しています」

骨髄異形成症候群が見つかるのは7%程度です。一方、胃がんや大腸がんといった消化器系のがんは35%、肺炎や腎盂腎炎などの感染症は19%、自覚のない状態での骨折が見つかるケースも9%あります。「単なる貧血」と放置していると思わぬ病気が進行してしまう可能性を秘めているのです。

「骨髄異形成症候群と診断を受けた患者さんが、別の病院でよく調べてみると銅欠乏による貧血だったということもあります。読者世代の貧血は、それほど診断が難しいといえます」

年とともに「最近調子が悪い」ということは起こりがちですが、「貧血」には原因があることを覚えておきましょう。健診でヘモグロビンの数値が低いときには、「貧血」に詳しい医師の診断を受けるのが何よりです。原因が胃潰瘍などと診断されたときには、その病気の治療をきちんと受けましょう。栄養素不足による貧血のときには、食事内容の見直しや薬の服用、サプリメントの活用など、主治医の指示に従ってください。

「栄養素不足の貧血が解消されると、持病の症状も改善しやすくなり、認知症などの病気の悪化を防ぐことにもつながります。異常を放置しないことが大切です」と宮腰先生。

貧血を解消すれば、だるさや食欲不振なども改善されます。夏バテも撃退することで猛暑を元気に乗り越えましょう。

持病の薬との飲み合わせに注意!

持病のある人で、 特に注意したいのは「腰痛の人で非ステロイド性抗炎症 薬を服用しているケース」で、消化管出血につながりやすく、 難治性腰痛の場合、多発性骨髄 腫が隠れている可能性がああります。

また、「狭心症、心筋梗塞、不整脈、深 部静脈血栓症、脳梗塞を発症し た人で抗血小板薬や抗凝固剤を 服用しているケース」も消化管出血につながりやすいので注意してください。

銅が足りない! ってどういうこと?

ミネラルの銅が体内で足りないと、 鉄が細胞に入ることができず、鉄を材料とするヘモグロビンが減り貧血につながります。また、白血球の一種・好 中球が減少するなど血液の異常も現れるため、銅不足は骨髄異形成症候群などと誤診されてしまうこともあります。

取材・文/安達純子


宮腰重三郎(みやこし・しげさぶろう)先生

東京都健康長寿医療センター血液内科部長。1959年新潟県生まれ。聖マリアンナ医科大学卒。虎の門病院血液科などを経て2006年東京都老人医療センター血液科医長、2009年より現職。高齢者の貧血に詳しく血液腫瘍の診断・治療が専門。


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