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医療と健康

2022年08月16日

熱中症予防法と応急処置

「今年の夏はとくに暑い」という言葉を毎年耳にしているが、それだけここ数年の日本の夏は暑く感じる。この時期になると注意しなければならないのは、やはり熱中症である。とくに高齢者は熱中症になりやすく、予防法やいざという時の応急処置法などをあらかじめ知っておいてほしい。

熱中症予防指標「暑さ指数」とは

暑さ指数(WBGT)という言葉をご存知だろうか。「暑さ指数25℃」などと表記されるもので、気温の表示とよく似ているが、湿度、日射・輻射など周辺の熱環境、そして気温の3つを考慮して定められる数値である。
最近では天気予報でもこの暑さ指数を伝えるようになり、また環境省のホームページ上でも日本全国の暑さ指数が随時掲載されているのでいつでも確認ができる。
この暑さ指数は、熱中症を予防する目的で提案された指標であり、28を超えると熱中症患者が著しく増加すると言われている。表1のように暑さ指数の数値によって日常生活における注意点などの指針が決められているので、常に意識しておくと良いだろう。

熱中症の原因と予防~3つの要素

人間の体温は、個人差もあるがだいたい36度程度に保たれるように調整されている。体温が上がってしまった場合でも、汗をかき、その汗が蒸発する際の気化冷却の作用で体温を下げるようになっているのだ。
熱中症は、その時の「環境」と、自身の「体調」と「行動」の3つの要素が絡み合って、体温調節がうまくいかなくなり発症すると考えられている。

《環境》
「環境」とは、気温の高さや湿度の高さ。また風が吹いているかどうかなども関係してくる。気温と湿度が高く、かつ無風の状態だと、汗をかいてもその汗が蒸発しにくくなり、体の冷却が追い付かなくなるため熱中症になりやすくなる。また、汗が揮発しにくい服装なども注意が必要である。

《体調》
「体調」は、疲れが蓄積している時や寝不足、また二日酔いの時など、体が弱っている場合に熱中症にかかりやすくなる。また下痢や熱などの病気にかかっている場合には脱水状態になりやすく、これも熱中症になりやすい原因となる。また、高齢者の場合はとくに、「のどが渇いた」という感覚が鈍くなっていることがあり、本人が気づかないうちに慢性的な脱水状態になっていることもあるため注意が必要だ。

《行動》
「行動」とは、たとえば熱い日中に激しい運動をしたり、長時間体を酷使する作業を行ったりするなどである。「暑さ指数」が高い際には、屋外での運動や作業は控えるべきである。

これら3つの要因によって体温のコントロールがうまくいかなくなると、体の中に熱がたまり、体温が異常上昇してしまう。これが熱中症である。
熱中症を予防するには、まず熱を発散しやすい服装を身に付けること。袖や襟の開いた服で熱がこもるのを防ぎ、肌着は汗を揮発させやすいものがよい。屋外にいる場合は直射日光を避け、できるだけ日陰で過ごし、日陰のない場所では日傘や帽子を利用する。またペットボトルの水やお茶を持参して、外出先でもこまめに水分補給ができる状況にしておくことだ。

応急処置4つのポイント
呼びかけ応答、自力で水分補給など

家族や友人、近くにいる人が万一熱中症になってしまった場合、すぐに適切な応急処置が必要となる。以下4つのポイントを順番に実行する。

①熱中症を疑う症状があるか?
めまい・失神・筋肉痛・筋肉の硬直・大量の発汗・頭痛・不快感・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感・意識障害・けいれん・手足の運動障害・高体温。これらの症状があれば熱中症を疑う。

②呼びかけに応答するか?
呼びかけに応答しない場合にはすぐに救急車を呼ぶ。救急隊が到着するまでは涼しい場所へ避難し、服のボタンやベルトを緩め、体を冷やす。近所にコンビニなどがあれば氷とビニール袋を用意し「氷のう」を作り、首、わきの下、太ももの付け根などにあてがい体を冷やす。救急車が到着したら熱中症になった時の状況を救急隊に詳しく伝える。
呼びかけに応答する場合には以下③に進む。

③水分を自力で摂取できるか?
熱中症の症状が重い場合、水分をうまく飲むことができないことがある。このような場合は無理に飲ませず、すぐに医療機関での診察を受けること。自力で水分補給ができる場合には、水、あるいはスポーツドリンク、経口補水液を飲ませて④へ進む。

④症状は改善したか?
症状が改善しない場合にはすぐに医療機関での診察を受けること。症状が改善したとしても、すぐに体を動かすのは良くない。涼しい場所で十分な休息をとることが大切である。

熱中症はいつ、どこで起きるかわからない。外出先でなくとも、室内で起こることもあるので、こまめな水分補給とエアコンを活用するなど、十分注意して暑い夏を乗り切っていただきたい。

髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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