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医療と健康

2022年04月28日

「味覚障害」とは?その検査と治療法について

「味覚障害」という言葉を聞いたことがあるだろう。食べ物の味を感じられなくなってしまう病気のことだ。味覚障害になってしまうと、食事の楽しみが失われてしまうばかりか、味が濃いものを求めるようになり、塩分・糖分を過剰に摂取してしまい、高血圧や糖尿病を誘発することにも繋がってしまう。今回はこの味覚障害についてどのような病気なのかを詳しくお伝えしよう。

味覚障害は、新型コロナに感染した場合の一つの症状として発症する人が増え、盛んに報道されたことは記憶に新しい。だが、コロナ禍以前でも味覚障害に悩まれている方は多く、2003年に行われた国勢調査では年間約24万人もの患者数と報告されており、とくに高齢者に多いという。

味覚というものは、食事を楽しくすることはもちろんであるが、口にしたものが傷んでいないか、あるいは毒をもつものではないかを判断するうえでも重要となる感覚である。まず、我々が食べ物を口にした際に感じる「味覚」とはどのような仕組みになっているのか。味覚を感じる過程について詳しく説明しよう。

味覚の仕組み

まず、食べ物を口に入れて噛み砕くと、食べ物に含まれている味の成分が唾液によって溶かされる。そしてその成分が舌の表面の「味蕾」という味覚を感じる細胞に結び付き、その信号が神経を通じて脳に伝わり、味覚として感じることができる。これらの過程のうちどれか一つにでも障害が発生すると味覚障害が起きてしまう。

多くの原因は亜鉛不足

味覚障害となる原因は亜鉛不足によるもの、薬の副作用によるもの、糖尿病や肝硬変、慢性腎臓病などの全身疾患によるものが多い。

このうち薬の副作用による味覚障害は、服用した薬の成分が体内の亜鉛と結合して尿として排出させやすくしてしまう作用によるものだ。

また全身疾患による味覚障害についても、亜鉛の吸収障害や亜鉛の排出を亢進させてしまうことによる亜鉛欠乏状態に陥ることがあるためで、いずれも味覚障害は亜鉛欠乏に関連していることが多い。

では、この亜鉛という物質は我々の体の中でどのような役割を果たしているのか。亜鉛は我々が生きる上でとても重要な役割を担っているミネラルであり、体の中で合成することができないために、日常の食事の中から摂取しなければならない。体の中では様々な化学反応が行われているが、そのうち3百以上の酵素を活性化させることにこの亜鉛が関与していると言われている。

食事療法と亜鉛製剤投与
赤身肉、レバーなど

亜鉛が不足すると、味蕾細胞が新しく生まれ変わるサイクルが遅れたり、舌に分布する神経の反応が低下すると言われている。また味覚障害以外にも、脱毛、皮膚炎、貧血、食欲低下、下痢、性腺機能不全、発達障害、骨粗鬆症などの症状も現れるという。

味覚障害を診断する検査にはいくつか種類がある。甘味、塩味、酸味、苦味の4種類の味を染み込ませたろ紙を舌の上に置いて味の感じ方を調べたり、微弱な電流を舌に流してその反応を見るなどの検査がある。また亜鉛欠乏の状態を調べるのに、血液検査で血中の亜鉛値を直接検査する方法もある。

亜鉛欠乏が原因の味覚障害の治療は、食事療法および亜鉛製剤の投与により行われる。亜鉛を多く含む食品のリストを表にまとめたので参考にしてほしい。とくに高齢者の場合は食事量がもともと少なく、慢性的に摂取不足の状態であることも多いため、普段の食事から赤身肉やレバー、米飯などを意識して食べるようにすると良い。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日の摂取の推奨量は18~74歳の男性で11㎎、75歳以上の男性で10㎎、18歳以上の女性で8㎎となっている。

食事から亜鉛を摂取することが理想的ではあるが、食品に含まれる亜鉛の量は僅かであり、亜鉛欠乏症を改善する程の十分な量を摂取することは難しい。そこで亜鉛製剤の投与も並行して行われる。

亜鉛の投与による副作用として、嘔気・腹痛などの消化器症状、血清膵酵素の上昇、銅欠乏による貧血・白血球減少、鉄欠乏性貧血などがある。とくに亜鉛を長期的に大量投与を行う場合には、腸での銅や鉄の吸収が阻害されてしまうため、定期的に血液検査を行ってそれらの値を調べていく必要がある。

亜鉛欠乏症以外の味覚障害の原因として、口腔乾燥症、口腔カンジダ症、鉄欠乏性貧血、ビタミンB12欠乏症、嗅覚味覚同時障害、心因性味覚障害などがある。
早期に検査を行い、適切な治療を開始することが重要のため、心配な方は早めに医師に相談をしてほしい。

髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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