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医療と健康

2022年06月28日

最近体を動かしていないなぁ…という方へ

新型コロナウイルス感染症が流行してから2年以上が経ちました。コロナ渦での新しい生活様式にはもう慣れましたか?なかなか落ち着かずにストレスが溜まっている方も多いのではないでしょうか。

外出を控え運動不足になったり、人との関わりが減ったりすると思わぬところで体や心の衰えが進みます。これを『健康二次被害』といいます。私は「健康体力学」という運動やスポーツに関わる学問の研究者ですので、今回は『健康二次被害』を予防するうえでの運動のとらえ方について述べていきたいと思います。

温熱が与える自律神経への影響

ある50代以上の男女に対するアンケート調査によると、「感染拡大後に運動をやめた、」または「中断したスポーツがある」といった回答の割合は20%以上、運動不足だと感じている割合は75%を超える結果だったそうです。私は海外の医療現場で仕事をしていた経験がありますが、米英に比べ日本では運動習慣を持つ高齢者の割合は比較的多く、また運動不足の問題は改善傾向にありました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症のまん延によってこの問題は解消に向かうどころか深刻になってしまっていると言えるでしょう。

人によっては、「ほんの少し運動したくらいでは意味がない」、「少しくらいは体操をするけれど健康には関係ないかな」、と考える方が非常に多くいらっしゃるようです。しかし、まず始めに覚えておいていただきたいことは、体力レベルを改善するだけの運動量や身体活動量ではなかったとしても、“しないよりは活動した方が良い”ということです。つまりほんの少しの身体活動(5分程度)でも、体を動かすのと動かさないのとでは、健康に与える影響は大きく異なるということが科学的に明らかとなっています。朝の体操や近所の散歩など時間は5分程度だったとしても継続して行った場合、心血管疾患の発症リスクは何もしていない人々と比べ有意に低くなることがスポーツ関連学会でも報告されています。

それでは、既にその程度ならば体を動かしているという方はもう少し頑張ってみましょう。どの程度の運動量が理想的なのかを考えてみます。ここでは運動強度にMETs(メッツ)という単位を使います。METsは安静時(静かに座っている状態)を1として、行った身体活動が安静時と比較して何倍のエネルギー消費となるかを数字で表しています。もしMETsが2であれば、安静時の2倍のエネルギー消費量だと考えてください。

厚生労働省が定める運動指針によると、3METs以上の強度の運動を毎週60分行うことが目標となっています。3METsといえばいわゆる普通のウォーキングで、早歩きをすると4METs強になると言われています。時間がない方は10分ずつ6日間で行っても構いません。外出するのは不安だという方であれば、部屋で体操(ストレッチングやヨガ)を行っても良いでしょう。ストレッチングやヨガは2METsから2.5METs程度ですが、この場合は1週間に最低90分(1.5倍)となるよう時間を延ばして行えば、ウォーキングと同程度の運動量ということになります。1日15分ずつ行えば4日間で完了できる計算です。

温熱が与える自律神経への影響

もちろん、もっとハードな運動を行っても構いませんし、器具などを使用しても楽しいです。大事なのは無理なく継続できることですので怪我等には十分気を付けて運動を楽しんでください。最近ではご自身が好きな運動が何METsなのかをインターネットで簡単に調べることもできます。ぜひ自分に合った運動を生活に取り入れて健康な日々をお過ごしください。

プロフィール

縣 右門(あがた うもん)先生
  • 縣 右門(あがた うもん)准教授
  • 日本薬科大学 薬学部・医療ビジネス薬科学科
    スポーツ薬学コース・栄養薬学コース 准教授
  • 博士(学術)
  • 研究領域は骨代謝に関連していて、骨が運動して強くなるメカニズムを明らかにすることにより、骨粗しょう症などが原因となって発生する骨折リスクをどう軽減するかについて調べています。骨粗しょう症は骨密度や骨量が減って骨折のリスクが大きくなる病気です。特に高齢女性で発症が多く、薬が発展した現代でも骨粗しょう症患者は増加傾向にあります。高齢者の骨折を防ぐ意味でも日々の栄養摂取やスポーツ活動はとても重要です。
  • 日本薬科大学 公式サイト
    https://www.nichiyaku.ac.jp/

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