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コラム

2018年08月06日

夏バテ予防の「おまじない」にも…?半年間の穢れを祓う「夏越の祓」連載28

毎日がスルスルと流れるように過ぎていく……この「スルスル」と感じることは、大難が小難、小難が無難になっていると考えれば大変有難いことであると思えます。

毎日を何気なく暮らしていても、人は生きているだけで、知らず知らずのうちに誰かを傷つけたり、また悲しませたり、小さな罪を犯しながら穢れつくものだと考えられてきました。
平安の昔より、この穢れを取り除く「祓い」が6月と12月の晦日に行われていました。12月の晦日はいわゆる大晦日のため大変忙しい一日なので、あまり行われることがなくなりました(神社によっては「茅の輪」は設置されている所もあるようです)今では6月の晦日だけが「夏越の祓」として残っています。
水に入って身も心も清め、禊ぎをするのが穢れを祓う本来の形ですが、上巳の節句の時に形代を流して穢れを流す「流し雛」と同じ考えで、形代(紙を人の形に切ったもの)を作り、それを自分の身体に擦り付けて、自らの穢れを移して水に流すという形に変化を遂げました。

形代を水に流すのと同じように、穢れを祓うこととして現在行われているのが「茅の輪くぐり」です。イネ科で多年草の「茅」で作られた巨大な輪を、左足から踏み出して、左回り、右回り、左回りの順で「8」の字を書くように3回くぐり抜けることで穢れを祓うものとされています。
伝説ではスサノオノミコトが備後国を訪れた時、蘇民将来に宿を借り、再び訪れた時にその子供達の腰の周りに茅の輪をつけさせました。その後のある年に疫病が流行り、茅輪をつけた子供達だけが命が助かったといわれています。それから茅の輪を腰につけると病から免れ身を守ると伝え広まり、形を変えて夏越の祓となったのです。

現在では6月30日に夏越の祓は行われ、執り行う神社では6月の中旬頃から茅の輪が設置されています。そう言えば……と思われる方もいらっしゃると思います。

病から免れるといえば、夏バテ予防のおまじないという気持ちで3回くぐり抜けると、暑い夏も茅の輪パワーをいただき元気に乗り切れる! かと思います。「病は気から」の気持ちの持ちようと考えたいです。暑気払いの乾杯よりも、効き目のあるご利益をいただけるように思うのです。

形代は神社によって形も様々ですが、形代に名前を書いて息を3回吹きかけ、形代をなでたり、身体を擦って穢れを移すとされています。
半期に一度の身体の大掃除と夏バテ予防。この半年を振り返り、あと半年に向け心新たに思いを正す……。1年の半分の節目の行事にも、先人の知恵は生きています。だからこそ意識的に取り入れたいものです。(老友新聞社)

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酒井 悦子
  • 伝統芸能コーディネーター / 筝曲演奏家

幼少より生田流箏曲を学び、現在は国際的に活躍する箏演奏家。

箏の修行と同時に、美術骨董に興味を持ち、古物商の看板も得る

香道、煎茶道、弓道、礼法などの稽古に精進する一方で、江戸文化の研究に励み、楽しく解りやすくをモットーに江戸の人々の活き活きとした様子と、古き良き日本人の心を伝えている。

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