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2026年01月02日

「延長28回の世界記録」は日本のプロ野球

10月27日、MLBのWシリーズでは延長18回の末、ロサンゼルス・ドジャースがミルウォーキー・ブリュワーズをサヨナラホームラン本塁打の6対5で倒した。これは18年にドジャースが3対2でボストン・レッドソックスに勝ったのと同じWシリーズ延長戦イニング最長回数記録だ。が、公式戦の延長戦最長回数の「世界記録」は、日本のプロ野球にある!

それは1942年5月24日の名古屋VS大洋戦。なんと延長28回2対2の引分け。1920年5月1日ブルックリン・ドジャースVS ボストン・ブレーブス戦の延長26回を上回る大記録だ。この記録の背景には第二次大戦があった。これは約1カ月前に試合の行われた後楽園球場近くに米軍の爆撃機B25による初の東京空襲があり、プロ野球は軍の圧力を受け始めた。

チーム名や競技用語の英語が日本語に変えられ、選手は試合前に軍服姿で手榴弾投げを披露。後攻チームがリードしてると最終回の9回裏は攻撃しないはずが、「敵は完璧に殲滅すべし」という軍の主張で、9回裏も攻撃を続行。

そんな戦時中の試合のため引分け試合は否定され、延長28回の試合も、選手がフラフラに疲れ日没でボールが見えなくなって、ようやく引分け試合終了が宣言された。

野球は1845年、「20点先取すれば勝利」というルールが定まり、元々引分け試合は存在しなかった。試合が1回で終わったり100回以上続いたりしイニングたため、回数が12回(後に9回)と定められても、MLBは無制サスペンデッド・ゲーム限の延長戦や一時停止継続試合で引分けなしの伝統を守っている。

そんな伝統とは無縁に、日本野球は引分け試合をルールに設けた。が、戦争と軍部の理不尽な圧力で「延長戦世界記録」が残ったのは、皮肉な「不滅の大記録」と言えそうだ。

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玉木 正之
  • スポーツライター 音楽評論家 小説家

新聞や雑誌で執筆・評論活動を展開するほか、TV・ラジオ番組に多数出演。主著に『スポーツ解体新書』『不思議の国の野球』『オペラ道場入門』他多数。

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