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コラム

2016年09月28日

京都の胃袋「京の錦通」での「通」な買い物の仕方は?<市田ひろみ連載7>

久しぶりに錦市場へ出かけた。京の胃袋だ。

金曜日の昼前。相変わらず、あらゆる国の人々を巻きこんで、細い錦通は満員電車のごとしだ。

川政(錦通富小路 角)の主人は、

「錦も変わりましたやろ」

主人とは長いつきあいだし、戦後から今日までの七十年の移り変わりは肌で感じる。

戦後、小さな錦の店は、蠅取紙が風にゆれていたし、コンロで魚を焼く煙がもうもうとして、おじちゃん達のよびこみも元気いっぱいだった。

私は、川政さんでいつものように、野菜をえらんだ。

錦では、値切ってはいけない。常連になれば、そこに主人の配慮があるはずだ。

「まけてまけて……」

というのは、錦通をしらない人だ。

「加茂なす出てまっせ!」

「万願寺(とうがらし)入ってまっせ!」

京の人は主人が教えてくれる情報がうれしいのだ。

情報はツーカーだ。旬に何かしらの意味を感じて、母など、おせちを作るのをたのしんでいたようだ。

私は母の後から籠をもたされて、だんだん重くなるのを、毎年のことながら野菜や干物の選び方を学んだものだ。

母は決まった店で買う。これは京の鉄則だ。一見ぶらぶら、あちこちで買っているように見えるが、肝心の黒まめ、白まめ、ぼうだらなど、旬なものは決まった店で買っていた。

男の場合も、祇園町の良い客は、決まったお茶屋へあがる。

「外人がふえましたねえ」

「世界中からでっせ」

京都は「トラベル・アンド・レジャー」誌に2年つづいて世界一の座を獲得しているしあわせな都市だ。

室町通りも大きく変わった。室町通りといえば、呉服問屋が立ち並び、大きなのれんが玄関にさげてあった。のれんは店の名前であったり、家紋であったり、またその地色も粋な色使いだ。

そして、呉服を満載したトラックが右往左往していた。

今やたんすの中も満杯。冷蔵庫の中も満杯。もっぱら、おばさん達は一泊?二泊の温泉旅行だ。

大体、お母さん同士で旅行に出かけるなんて、考えられなかった。戦後、お母さんが解放されたのが大きな変化だ。

「嵐の桜井翔のファンだって。息子が受験というのに、この間は仙台へ追っかけで行ったそうだ……」

息子と一緒に入試をたたかうお母さんもいるだろうが、タレントの追っかけのお母さんもいるのだ。

毎日、反体制のマスコミは、安倍たたきがはげしいが、外交にも積極的に自ら動いて、頑張っている総理を応援したい。

ともすれば、くさいものにフタ。が多かった中で、安倍さんは海外へも早めに手を打っている。

日本の名誉を傷つけるようなヤジ。重箱の隅をほじくるあげ足とりに終始する野党。何とはげしい口げんかに終始する国会にはうんざりする。日本は島国だから、領土問題にうといが、もうそんなことは言ってられない。

私も七十年前、リュックサックひとつで上海から帰ってきた引揚者の一人だが、日本が方向をまちがえないように祈るばかりだ。

錦通がにぎわうのは、平和のあかしかもしれない。(老友新聞社)

 

 

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市田 ひろみ
  • 服飾評論家

重役秘書としてのOLをスタートに女優、美容師などを経て、現在は服飾評論家、エッセイスト、日本和装師会会長を務める。

書家としても活躍。講演会で日本中を駆けめぐるかたわら、世界の民族衣装を求めて膨大なコレクションを持ち、日本各地で展覧会を催す。

テレビCMの〝お茶のおばさん〟としても親しまれACC全日本CMフェスティバル賞を受賞。二〇〇一年厚生労働大臣より着付技術において「卓越技能者表彰」を授章。

二〇〇八年七月、G8洞爺湖サミット配偶者プログラムでは詩書と源氏物語を語り、十二単の着付を披露する。

現在、京都市観光協会副会長を務める。

テレビ朝日「京都迷宮案内」で女将役、NHK「おしゃれ工房」などテレビ出演多数。

著書多数。講演活動で活躍。海外文化交流も一〇六都市におよぶ。

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