老友新聞2023年9月号に掲載された短歌入選作品をご紹介いたします。（編集部）

一　席

大欅緑一色に染めかえて小鳥に宿を貸しているらし

岸　慶子

欅の大木が滴るばかりの緑一色になる夏。そこにたくさん飛んで来る小鳥に「宿を貸している」の表現が、欅の包容力、大きさを感じさせます。

二　席

ぽっかりと火口をひろげ摩周岳の空に向かって咆えるがごとし

藤本　洋子

アイヌ語で神の山を意味する「カムイヌプリ」とも呼ばれる摩周岳は、およそ千年前に発生した噴火によってできた大きな爆裂火口。空に向かって咆えているような、と感じる程雄大な景色です。

三　席

それぞれに木々の緑は深まりて夏空の下山脈続く

多田　シズモ

木々の緑、夏空の青、そして延々と続く山並み。暑さを感じさせない爽やかな夏を描写して気持ちの良い一首です。