コラム
「想像すると現れる…?」今も昔も妖怪は人気者~連載77
怪談話の主役と言えば、お化け、妖怪、幽霊。さて、この区別はどのようになっているのかと言えば、怪異な現象や怪しげなものは一括りに「お化け」と片づけられることが多く、化け物は生き物、物体、気配などの別なものに化けることなので、妖怪も幽霊も化け物ということになります。ただ、幽霊というのは、この世に思いを残した者が迷い出るもので、その思いが解消されると出なくなります。妖怪は別なものに化けたり、妖力を持ったモノで、神や人間、動植物などと幅広く、現れ方も千差万別。動物やモノが年月を経て妖力を持つことが多いといわれています。
妖怪は鎌倉中期から「絵」として姿を現していましたが、資料が少ないためにもっと以前からあったと思われます。ここ数年ブームになっている妖怪の姿の多くは、安永5年(1776)に刊行された鳥山石燕の妖怪画集『図画百鬼夜行』によるものです。
江戸中期から絵草子が流行すると、妖怪は絵師や戯作者達の手によって創作されて、「商品」として此の世にお目見えすることになります。雪女と狸が結婚してカッパが生まれたなど、滑稽な話が裏付けもなく語られるようになり、妖怪の絵は絵師の想像で絵草子類に描かれ、江戸庶民の人気となっていったのです。
妖怪とひと口に言ってもちゃんと分類されています。代表的な妖怪達をご紹介しましょう。
人間の怨念が生んだ妖怪は油すまし、鬼、天狗。異形の妖怪は河童、ろくろ首、ぬらりひょん。人の姿をした妖怪は人魚、一つ目小僧、雪女。物が変化して妖怪は一反木綿、からかさ小僧、塗り壁。動物が変化した妖怪は化け猫、葛の葉、土蜘蛛。以上の5分類ですが、なんとなく、身近に感じるような気がしませんか。
江戸時代の随筆集には不思議な体験談が数多く残されています。現実の世界に生活する当時の人々の怪異に対するアンテナは、今よりもずっと高かったようです。文明が発達してもともと人間が持ち合わせていた五感や気配を感じ、恐れ、危険を回避することなどの能力が衰えてしまった現代人です。このままでは基本的な能力を失ってしまうかもしれません。
週に一度位は、電気を消して空を見上げたり、頭を空にすることで、五感が甦り、子どもの時に感じた不思議なあの気配。妖怪達を想像することで、もしかしたら、本来の世界が見えてくるかもしれません。
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