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三遊亭ぽん太の下町寄席からこんにちは!

三遊亭ぽん太の下町寄席からこんにちは!

2022年03月17日

連載7「落語の覚え方」

こないだまでコートにヒートテックが欠かせなかったのにすっかり春めいてきましたね。
今回はよくある疑問に答えてみたいと思います。
「落語家は長い噺をどうやって覚えるんですか」
これはよく言われますが、正直さほど大変な作業ではありません。
人によって違いますが、私の場合は教わる噺を録音させて頂きそれを紙に書き出してひたすら音読、そのうちに台本無しの状態で喋ってみて、抜けてる箇所をチェックといった手順です。
子供の頃初めて補助輪無しの自転車乗るのに最初は親に後ろを持っててもらってそのうち手を放す、あれと同じ感覚でしょうか。

こう書くと結構記憶力がいい人じゃないとなれなさそうですが、これにも前座時代の修行が役に立ってます。
寄席の楽屋にはスピーカーがあり高座の音が聞こえるようになっています。
なので前座として毎日のように働いてると自然と落語が耳に入り勝手にある程度は覚えてしまうのです。
もちろんずっと落語を聞きっぱなしじゃたださぼってるだけなので楽屋仕事をしながらです。
これを我々の世界では捨て耳と言います。
楽屋には色んな師匠方がいらっしゃいますので、一つのことだけに集中しないで周りに気を配る訓練にもなります。
それなので師匠方に稽古のお願いをする段階で噺の大枠はわかっているので覚えも早いです。

また現在我々は稽古の際ボイレコなどで録音して覚えますが、昔はそんなものはありません。
その時代の稽古は三べん稽古と言いまして師匠が目の前で三回ネタをやって下さってそれで覚えるというもの。
すごい記憶力ですね。
私も入門して一番最初の稽古でいっぺんだけやったことがあります。
2分ほどの小噺ではありますが入門したててで集中してたので案外覚えられるものでした。
今はもう無理です(笑)
とは言え比較的覚えるのは早い方なので10分くらいの短いネタなら台本に書き出してから5回くらい音読すれば覚えられます。

しかし落語は覚えればいいというものではありません。
創意工夫が必要です。
とは言え入門したての前座の時はまず教わった通りに覚え、滑稽噺のパターン、形をしっかりと身につけます。
そこからだんだんと自分の色を出していきます。
その形を覚える過程を経ず、好き勝手にやってしまうとそれこそ『形無し』になってしまいます。
なにより基本が大事なのです。
また師匠が「覚えが早い人は噺をなめちゃう」とも言っていました。
すぐ覚えてポンポンやってしまうのでネタを深く追及したり大事にしないということでしょう。
私もこれは常に肝に銘じて一つ一つのネタを大事に育てていきたいです。
なにしろ50代でも若手と言われる世界ですからまだまだ先は長いのです。
なのでいかがでしょう、スマホで育成ゲームをする感覚で若手の落語家の成長を見守るというのは?
月に1、2回寄席や独演会に行き、面白ければおおいに笑って頂き、もし面白くない時でも「ガチャに外れた」と寛大な気持ちで許して頂けると嬉しいです(笑)

三遊亭ぽん太 ※現在平和を祈念して高座着をウクライナカラーにしてます

お知らせ

三遊亭ぽん太独演会
春のぽんまつり’22
日時・3月19,20,21日(土,日,月・祝)14時開演
会場・池之端しのぶ亭
料金・3日券3000円、2日券2500円、1日券1500円、U25割1000円

三遊亭ぽん太の月例落語会
ぽん太ラボvol.28
日時・4月2日(土)14時開演
会場・亀戸梅屋敷
料金・予約1500円、U25割1000円、ぽん太初めて割500円
予約、問合せ・pontathe2nd@gmail.com

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三遊亭ぽん太
  • 三遊亭ぽん太
  • 落語家
  • 1985年2月24日生まれ / 愛知県名古屋市出身 / 法政大学社会学部卒 / 2015年2月に三遊亭好楽に入門、前座名「好也」 / 2018年11月二ツ目に昇進「ぽん太」を襲名 / 現在、持ちネタは古典新作合わせて140席以上ある
  • ぽん太さんのHP
    https://pontathe2nd.amebaownd.com/
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