医療と健康
睡眠障害と解決策
睡眠は私達が生きる上で極めて重要な役割を果たしているのはご存知の通りで、体の健康を保つためにも、そして日々の生活を充実したものにするためにも質の高い睡眠は不可欠である。ところが人は年齢を重ねると睡眠が浅くなり、よく眠れないという人が多くなると言われている。そこで、高齢者に多い睡眠障害について、その解決策も含めてお伝えする。
良質の睡眠は免疫力が向上
脳もリフレッシュされる
睡眠は人が健康的に生きるために重要な役割を果たしている。たとえば我々が睡眠をとっている間、体は成長ホルモンの分泌が活発化し、細胞の修復や再生が行われている。また一日の疲労を回復し、精神的なストレスも軽減される。
質の良い睡眠をとることができれば免疫力も向上する。風邪を引いたときに十分な睡眠をとることが大切なのは、睡眠中に免疫細胞が活性化して病原体と戦うための抗体が生成されるためだ。
さらに睡眠中は脳の記憶の整理や定着が行われリフレッシュされる。十分な睡眠が得られないと体はもちろん、脳にも疲れやストレスがたまり、翌日の活動にも悪影響を与えてしまうのだ。
ところが歳を重ねると、徐々に睡眠のパターンが変化をしていく。若い頃は何の問題もなく、夜になれば自然にグッスリと眠ることができたのに、高齢になるとなかなか寝付けない、夜中に何度も目が覚めてしまう、朝、目覚めが早すぎてしまうなどの問題を訴える人が増えてくる。歳を重ねるとどうしても体力が落ちたり、活動性も低下する。それにつれて睡眠をとる能力というものも低下してゆくものなのだ。
「入眠・熟睡障害」「中途・早朝覚醒」
高齢者に多い睡眠障害
一言で睡眠障害と言ってもいくつかのパターンがある。まず夜になって床についてもなかなか寝付けない「入眠障害」、夜中に途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」、起床時間よりも早くに目が覚めてしまう「早朝覚醒」、眠りが浅くてぐっすり寝たと感じられない「熟睡障害」などだ。
これらの症状が1か月以上続き、日常生活にも支障が生じる状態になると「睡眠障害」となる。この睡眠障害で悩む高齢者は多く、80歳以上では3人に1人がこれらの症状があると言われている。
このような睡眠障害となる原因もさまざまであるが、とくに高齢者に多いのは身体的な問題が原因となっているものだ。
たとえばひざ痛や腰痛、肩こりなどの慢性的な痛みを抱えており、その痛みのためになかなか眠れない、眠りが浅くなってしまうというケースだ。痛みのほかにも、乾燥肌によって皮膚のかゆみに悩まされていたり、足の先がむずむずする、いわゆる「むずむず症候群」などの症状を抱えていると、それが原因で睡眠障害を引き起こすことがある。
また高齢者の場合には、どうしても日中の活動量が低下してしまう。昼間でも家に閉じこもっていたり、あるいは常に体を横にしてテレビを見続けて、うとうとと昼寝をしているという人も少なくないだろう。日中に浅い、質の低い眠りを繰り返していると、肝心な夜に眠りたくても眠れなくなってしまうのだ。
精神的ストレス、不安なども睡眠障害を引き起こす原因となる。高齢者の場合はとくに、けがや病気などの身体的問題、人間関係や話し相手がいなく孤独を感じているなども不安やストレスを引き起こし睡眠障害の原因となる。
睡眠時無呼吸症候群も注意しなければならない病気の一つだ。肥満などの影響で寝ている間に気道が狭まり、無呼吸を起こす病気だが、しっかりした睡眠がとれないことによって日中眠くなるなどの影響もでる。いびきが大きい方や、寝ている間に息が止まっているような方は要注意で、一度無呼吸の検査をする必要がある。
このような睡眠障害の状態が長く続くと様々な悪影響が現れはじめる。血圧が上昇したり、血糖値のコントロール状態が悪くなったりするため、生活習慣病のリスクも高まる。
またホルモンバランスが崩れることで過食になったり、精神バランスが崩れて高ストレス状態、うつ病になるリスクも高まってしまうのだ。
快適な睡眠のために
生活習慣を改善
健康的で快適な睡眠を確保するためには、日々の生活習慣を改善することが必要だ。
まずは睡眠のリズムを整えることが重要である。
「体内時計」というものをご存知だろうか。我々の睡眠や食事、細胞の活動やホルモン分泌などのリズムは一定の周期が保たれているが、この体内時計は1日25時間の周期であると言われている。1日は24時間なので、1日あたり1時間のずれが生じていくのだ。
この1時間のずれを調整してくれるのが、脳の奥深くにある視交叉上核(しこうさじょうかく)という器官である。朝目覚めたとき、朝日などの強い光刺激を受けることで、この視交叉上核が睡眠状態から覚醒状態に切り替えてくれる。そしてその時点からまた新しい一日のリズムが刻まれるように体内時計をリセットしてくれるのだ。
体内時計のリセットには、朝日を浴びる以外にも、大きく深呼吸をしながら「伸び」をしたり、適度に体を動かしたり、しっかりとした朝食をとるなども効果的だ。
また、日中しっかりと活動をすること。日中はできるだけ外出をするなどして体を動かす。また友人などに逢い、一緒にショッピングやカラオケなどの趣味を思い切り楽しむこと。眠っている時と起きている時のメリハリをつけることが重要である。
眠りにつきやすくする環境を整えるのも大切である。眠る前はテレビやスマホなどを見ないようにする事。強い光刺激を続けていると脳が活性化してしまい、眠りにくくなる。また眠る前にはカフェインを含む飲料やアルコールなどを控えること。アルコールは寝つきが早くなるが、一方で眠りの質を悪くし、浅い眠りになってしまうので避けた方が良い。入浴はぬるめのお湯に長く浸かるとリラックス効果を得やすい。また温まった体が徐々に冷めていくタイミングが一番入眠しやすいと言われているので、入浴は眠る1時間ほど前に済ませておくと良い。
それでも睡眠障害が改善しない場合には、睡眠の質を向上させるための薬や、あるいは夜尿症が原因で夜中に中途覚醒をしている場合もあるので、その場合にもやはり薬物療法が必要となるので、一度かかりつけ医に相談をしてみると良いだろう。
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