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医療と健康

2024年01月02日

高血圧のリスク要因と主な疾患

日本での高血圧罹患者数は、病院を受診していない人の予測値を含めると約4千3百万人と言われており、実に3人に1人が高血圧に罹患していることになる。しかし高血圧は、初期の段階では自覚症状がほとんどないため、本人が気づかなかったり、治療法せずに放置されてしまうことも多い。しかし病状が進行すると心臓病や脳疾患など深刻な合併症を引き起こす可能性があるため「沈黙の殺人者」と呼ばれることもあるほど恐ろしい病気なのだ。今回は高血圧について、早期発見の重要さと、決して放置してはいけない事、そして予防のための生活習慣などについて詳しくお伝えする。

血圧は毎日記録し変化を知ろう

ご存知の通り、血液というものは細胞に酸素や栄養を運び、そして不要なものや二酸化炭素を排出するために体中を巡っている。この血液を送り出す役割を果たしているものが心臓で、常にポンプのように収縮・拡張を繰り返しているのだ。

この血液を送り出すためのポンプの圧力が血圧であり、高血圧の基準は、日本高血圧学会により収縮期血圧(上)が140㎜Hg以上、拡張期血圧(下)が90㎜Hg以上と定義されている。ただし、年齢やその他の疾患を持つ場合、また病院で計測した場合と家庭で計測した場合などで高血圧の定義は異なる。

ご自身の血圧と比較していただきたいのだが、そのためにはまず自分自身の血圧を知っておくことが必要だ。健康診断や病院を受診した際などに血圧を測定してもらうのも良いが、できれば自分の家で、同じ時間、同じ条件下で毎日測定をし、記録することを習慣にしていただきたい。そうすることでより生活な血圧を知ることができ、また毎日記録することで血圧の変化を早期に知ることができるのだ。家電量販店などで購入してみてはどうか。
では、どのような人が高血圧になりやすいのか。高血圧のリスク要因をいくつか挙げてみる。

■生活習慣
悪い生活習慣は高血圧のリスクを増加させるが、その要因はいくつかある。

高塩分の食事
塩分の多い食事をすると、血液中の塩分(ナトリウム)が増加し、するとそれを薄めようとして血液中の水分量が増え、血圧が上昇する。

高脂肪の食事
高脂肪の食品、特に飽和脂肪酸が多く含まれる食事は、動脈硬化を促進し、血管の内側に脂肪が堆積する可能性が高まる。これにより血管が狭くなり、血液もドロドロの状態となり、血圧が上昇する。

肥満
肥満の人は過食のため、その分塩分摂取量も増えてしまう。また脂肪細胞から血管を収縮させる物質が分泌されるため血圧が高くなる。

運動不足
運動をすると体内の余分な塩分(ナトリウム)を排泄させる働きを強める作用を高めるが、運動不足になると体内に余分な塩分をため込みやすくなり、血圧が上昇してしまう。また運動不足は肥満にもつながる。

喫煙
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血圧を上昇させてしまう。

過度な飲酒
過度な飲酒も血圧を上昇させてしまう。とくに長年、過度なアルコール摂取を続けていると高血圧の原因となる。

■遺伝的要因
家族に高血圧の人がいる場合、遺伝的な要因により高血圧になりやすい傾向がある。

■年齢
年齢が上がると血管が硬くなり、高血圧になるリスクが高まる。

■糖尿病
血糖値が高いと血液の浸透圧が高くなり、細胞内の水分が細胞外に出てきたり、腎臓からの水分の吸収が増えたりするなどで、体液・血液量が増加し、血圧が上昇してしまう。

■ストレス
長期間のストレスや過度のストレスがかかると自律神経のバランスが崩れ、血圧を上昇させてしまうといわれている。

以上のような要因が複数組み合わさることで、さらに高血圧のリスクは高まってしまう。

高血圧が招く疾患

実際に高血圧になるとどうなるのか。高血圧が招く代表的な疾患をいくつか挙げてみよう。

■動脈硬化
高血圧が続くと、血管内壁にコレステロールやその他の物質が蓄積し、動脈硬化が進行する。動脈硬化は血管を硬くし、血液の流れを妨げ、心臓病や脳卒中のリスクも高めてしまう。

■心臓病
高血圧は、心臓が高い圧力で血液を送り出している状態であるため、心臓の筋肉が厚くなり心肥大を起こす。 また動脈硬化になると心臓への血液の循環も悪くなり、心臓が酸素不足の状態になり、心筋梗塞を招くこともある。

■脳卒中・脳梗塞
高血圧によって脳血管が損傷し、脳卒中のリスクが高まる。また脳の血管の動脈硬化が進むと、血管が詰まり脳梗塞にもなる。

■慢性腎不全
高血圧により腎臓の血管の動脈硬化が進むことで慢性腎不全となることがある。

■高血圧性網膜症
高血圧によって目の奥にある網膜の血管が細くなったり損傷したりして、眼底出血などを起こして視力の低下や失明の原因となる。

■認知症
先にも述べたが、高血圧は脳卒中や脳梗塞を引き起こすことがあり、これが認知症の原因となることがある。

以上のように、高血圧は初期の段階では症状が現れにくいものの、放置すると命に関わるような病気や、QOL(生活の質)を著しく低下させてしまう原因となるものである。毎日血圧を測定し、血圧が高いと感じたならばすぐにかかりつけ医に相談をし、適切な治療や生活習慣の改善に努めていただきたい。

髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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