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医療と健康

2023年08月22日

血管の老化現象…「動脈硬化」について

いまや国民病とも呼べるほど多くの人に蔓延している動脈硬化症。日本人の死亡原因をみると、1位が悪性腫瘍(がん)、2位が心臓病、3位が脳血管疾患となっているが、2位の心臓病と3位の脳血管疾患の原因となっているのが動脈硬化である。さらに腎臓病や糖尿病の原因のひとつでもあるので、これらを合わせると非常に国民の多くが悩んでいる病気ということがわかる。今回は動脈硬化症とはどのようなものか、検査法や予防法なども含めてお伝えしよう。

 

血管が厚くなると…

動脈硬化というものは、その名の通り血管が固くなってしまう病気と思われがちだが、実際は少し異なる。正しく言うと、血管の壁が厚くなる病気である。もちろん厚くなることで血管の弾力性が失われ、結果的に固くなるのだが、問題なのは「厚くなる」という部分である。

動脈硬化によって血管の壁が厚くなると、当然血流が悪くなる。すると血液を送り出すポンプの役割を果たしている心臓にも負担を掛けることになるのだ。

また、血管の内壁が脆くなり、アテロームと呼ばれる粥状のコレステロールの塊が形成されるようになる。症状が進行すると、血管の内壁がどろどろになり、錆びた水道管のような状態になるのだ。危険なのは、この粥状の塊が剥がれ落ちて、血流に乗って流れていくと、血管が細くなった部分を詰まらせてしまうことがある。これがいわゆる血栓であり、そこから先は血液が流れなくなってしまうのだ。

動脈硬化が原因となる病気には、読者諸氏もよくご存知の恐ろしい病気が多くある。心臓に負担がかかることで高血圧をとなったり、心肥大、心不全などの心疾患を引き起こす。また、血栓で血管が詰まってしまうと、心臓では心筋梗塞、狭心症など、頭では脳梗塞、脳卒中など、命にかかわる重病を引き起こす。そして足の方でも、下肢閉塞性動脈硬化症といって、足の血管が詰まり、痛みで歩けなくなってしまうこともあるのだ。

動脈硬化症の検査法

一般的には、血液検査で大雑把な予測ができるという。コレステロールが高いとか、中性脂肪が高いとか、尿酸値が高いというのも、動脈硬化に繋がるそうだ。ただそれは、本当に動脈硬化を見ているわけではない。
それからX線検査。動脈硬化がかなり進んでいる場合で、血管に石灰化があれば見ることができ、ある程度、動脈硬化ではないかなという検討が付けられるという。

一般的に行われているのが脈波検査というもの。この検査では動脈の固さを知ることができる。血圧を測定するのと同じような方法で簡単に検査をすることができるが、正確ではないそうで、血管の内壁に出来るアテロームの有無までは知ることができないという。 もうひとつ一般的に行われているものが頚動脈超音波検査というもの。首の動脈である頚動脈を測定することで、全身の動脈硬化の進行度を知ることができる。検査をする場所が首のため、服を脱ぐこともなく簡単に検査が行え、痛みもない。血管の厚みや、固くなっていないかなどを視覚的に捕らえることができる。

正常な方の頚動脈は、内壁はとても綺麗に写る。血流もスムーズである。血管の太さはだいたい7~8ミリくらいで、血管壁の暑さは1ミリほどである。ところが動脈硬化を起こし、とくに症状が進行している場合は厚みが3倍以上になることもあるという。血管壁が厚いと丈夫であるかと思いがちだが、そうではない。血管が厚くなると脳卒中、脳梗塞、心筋梗塞の発症する割合が増えるのだ。

頚動脈だけではなく、腹部の大動脈を検査する場合もあるという。大動脈は頚動脈よりも太く、1・5センチから2センチくらいある。腹部の検査の場合、大動脈瘤という病気を検査することもできる。大動脈瘤とは、血管の一部がコブのように膨れ、そこで血液が渦をまくようになり、血栓も出来やすくなる。また、症状が進行し、コブが大きくなりすぎると破裂する危険もあり、命に関わる。

予防には生活習慣の改善を

動脈硬化をくいとめるためには薬による治療が行われる。コレステロールを下げる薬で、血管が厚くなるのを改善したり、高血圧の人は血圧を下げるための薬を服用するのだという。

その他に重要なのは生活習慣の改善をすることだ。まずは運動。肥満を解消して、コレステロールを下げるためでもあるが、さらに悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす意味もあるという。
また、食生活の改善も重要である。肉、揚げ物など油分の多い食事をしている場合には魚料理に切り替え、野菜や海草も多く採ってバランスの良い食事にすることが大切である。動脈硬化改善が期待できる食品は、大豆、ごま、青魚、たまねぎ、にんにく、トマトなどがある。

年齢を重ねると、それだけで動脈硬化症になりやすく、血管の老化現象とも言えるものである。ストレスや喫煙習慣、飲酒習慣、運動不足、高血圧などがある人の場合には血管の老化現象が早まるという。しかし、これらの生活習慣を改善することで、老化現象を少しでも遅くすることもできるのだ。頭、体の老化現象はもちろん、血管の老化現象についても注意してほしい。また、動脈硬化は自覚症状がほとんどなく、自分では判断が付きにくい。頭痛、めまい、動悸・息切れなどがある場合は、一度検査をしてみると良いだろう。

髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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