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医療と健康

2021年08月27日

「物言わぬ臓器」~働き者の肝臓を労わろう

まだまだ厳しい残暑が続いている。外出を控えて家で過ごしているとしても、喉が渇いてつい冷たいドリンクやビールを飲みたくなることも多いと思うが、飲みすぎ、食べすぎが気になるところだ。日本人はもともと内臓脂肪がたまりやすいと言われており、肝臓に脂肪がたまる「脂肪肝」は国民病とも呼べる生活習慣病の一つだ。今月は、過剰な飲酒、食べすぎと、脂肪肝との関係をまとめてみた。

日本人がなりやすい「脂肪肝」

すでにご存知の読者も多いと思うが、脂肪肝とはその名のとおり、肝臓の細胞に脂肪が蓄積した状態を言い、日本消化器病学会では「3分の1以上の肝細胞に脂肪の沈着が認められた場合に脂肪肝とする」と定義している。
脂肪肝となった状態でも、とくに症状が現れるわけでもなく、病気は静かに進行する。脂肪肝が進行すると、慢性肝炎や肝硬変、やがては肝臓がんにも進行する。慢性肝炎は、肝細胞が炎症を起こしている状態で、疲れやすい、だるい、食欲不振などの症状が現れる。
そして、炎症によって破壊された肝細胞は、自ら再生しようとするのだが、それを何度も繰り返すうち、再生に失敗し、硬くなって繊維化する。それが肝硬変だ。
肝硬変まで進行すると、ようやく外見に症状が表れるようになる。胸の部分の毛細血管が広がり、赤く浮かび上がったり、腹水といってお腹が蛙のようにぽっこりと膨れ上がったりする。また病期が進行すると大量出血に繋がる食道静脈瘤や、記憶、意識障害を伴う肝性脳症などの深刻な合併症も心配される。

肥満とアルコールがもたらす肝臓病

脂肪肝の原因は栄養の過剰摂取による肥満、そしてアルコール過剰摂取、この二つが代表的なものだ。
まず、アルコール性肝障害について。アルコール性肝障害は「常習飲酒家」「大酒家」の人に起きやすい。常習飲酒家というのは、日本酒でたとえると、1日に3合を、毎日、5年以上続けて飲んでいる人の事を指す。アルコールの量に換算すると69gである。さらに大酒家と呼ばれる人は、日本酒を1日に5合、10年以上続けている人のこと。アルコール換算で115g。大酒家の人の場合には、高い確率で肝硬変を引き起こすという。


また、肝がんというと、ウイルス性のものが多いと思われがちだが、アルコールに起因した肝がんも、全体の22%程度あり、アルコールも肝がんの大きな危険因子の一つなのだ。
アルコールと上手に付き合うための十か条を紹介しよう。

・酒に強いか弱いか、自分の体質を知ること
・酒に弱い体質なら決して無理に飲まない
・強い体質でも1日1合程度に
・週に2日は休肝日をつくる
・強い酒は薄めて飲む
・ゆっくりと時間をかけて飲む
・つまみと一緒に飲む
・薬と一緒に飲まない
・女性は男性の半分の量とする
・休みでも朝酒をしない

これら十か条を守って適正飲酒を心がけたいものだ。ただし、すでに健康診断などで脂肪肝であると診断され、医師に禁酒をしてくださいと言われている場合には、もちろんそれに従うこと。

では、脂肪肝のもう一つの原因である肥満について。
そもそも日本人は、少しの肥満でも病期になりやすいという。それには「倹約遺伝子」というものが関係しているそうだ。
1万年ほど昔の我々人間の祖先は、狩猟や採集によって食料を得ていた。現代のように、毎日3食、安定して食事が出来たわけではなく、飢えを凌ぎながら生きてきた。そのため、この倹約遺伝子を持つようになり、僅かな食料でも生きられるよう、進化をしたのだ。その反面、栄養を採りすぎると肥満になりやすいというわけだ。

高齢になるにつれ、基礎代謝量、つまり1日に最低限必要となるエネルギー量は減っていく。若い時と同じ量の食事をとると、基礎代謝量が減っている分、余剰なエネルギーとなり、体に脂肪として蓄積されてしまうのだ。

生活習慣の改善と
運動療法、食事療法

最後に、脂肪肝の治療についてお伝えする。肥満が原因であるのならば、まずは減量。アルコールが原因であるならば禁酒である。また、糖尿病、高脂血症、高血圧などを抱えている人であれば、その治療をきちんと行うこと。そして生活習慣の改善、運動療法と食事療法だ。

 厚生労働省が、身体活動量の目標というものを提唱している。脂肪肝の治療を目的としているわけではないのだが、健康維持に必要な目標として掲げているものだ。これは「週に23エクササイズ以上の活発な『生活活動』を行い、そのうち4エクササイズ以上の活発な『運動』を行う」というもの。ここに出てくる「エクササイズ」というものは、運動の強度を表す単位だ。

たとえば『生活活動』のグループでは、普通歩行・床掃除・子供の世話などをそれぞれ20分行うと1エクササイズになる。速歩・自転車・介護・庭仕事ならそれぞれ15分行うと1エクササイズ。階段の上り下りならそれぞれ10分行うことで1エクササイズになる。
『運動』の例ならば、ボウリングなら20分で1エクササイズ。速歩・体操・ゴルフならそれぞれ15分で1エクササイズ。軽いジョギング・エアロビクス・テニスならそれぞれ10分で1エクササイズ。ランニング・水泳ならばそれぞれ7~8分行うことで1エクササイズとなる。

これらの例の中から1週間の合計で23エクササイズ、そのうち44エクササイズ分は『運動』のグループの中から選んで行なうということが推奨されている。確実に脂肪を減らすためには、『運動』のグループの割合を増やすと良いそうだ。

食事は満腹感、満腹中枢をしっかりと働かせることが大切だ。早食いが一番悪く、満腹感を感じる間もなく、かきこむように食べてしまい、満腹感を感じる頃にはお腹がはちきれるほどに食べてしまうことになる。よく噛むことが大切で、1口30回噛んで食べると、噛むという行為自体で、満腹感を促す神経を刺激する。また、ゆっくり時間をかけて食べることになるので、満腹感を感じる前に食べ過ぎてしまうことも防げる。「食べたいものを我慢するのではなく、余分なものを食べない」ということが、ストレス無く減量するポイントなのだそうだ。

肝臓は「物言わぬ臓器」。毎日、何一つ文句を言わずに働き続けてくれている働き者だ。アルコールとの正しい付き合い、そして運動、食事のとり方。これらの生活習慣を見直して、肝臓を労わろうではないか。

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