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2016年11月07日

増加する糖尿病 ~その症状と予防策~

我々の身体全体に栄養や酸素を送り届けてくれる血液や血管にまつわる病気。数あるその中でも、今回は罹患者の多い糖尿病について、その症状と予防策についてまとめてみよう。

 

厚生労働省が実施した平成26年の調査によると、糖尿病の患者数は316万6千人にも及び、3年前の調査から46万人も増加しているという。しかもこの数字は、何らかの治療を受けるなど、自身で糖尿病と認識をしている人の数であり、潜在的な患者数は1千万人にも上ると言われている。先月ご紹介した高血圧同様に、まさに国民病と呼んでもよいほどの患者数である。

血液の成分中には糖(ブドウ糖)が含まれており、これは私達が生きる上での大切なエネルギー源である。この血液中の糖の濃度、いわゆる血糖値はインスリンの働きで一定に保たれているが、何らかの原因でインスリンの分泌が足りなくなってしまったり、働きが不十分になってしまうと、血糖値が上昇しすぎて糖尿病になってしまうのだ。

 糖尿病には「1型糖尿病」と「2型糖尿病」が存在する。「1型糖尿病」は、インスリンを産生する膵臓の働きに異状がおこり、インスリンを作り出せなくなってしまい血糖が上昇する病気である。「2型糖尿病」は、食生活の乱れや運動不足などの生活習慣が原因となって、インスリンの産生が低下したり、その働きが悪くなったりして血糖が上昇してしまう病気である。

では、血糖値が上昇するとなぜ病気になるのか。実は血液中の糖が多すぎると、血管の内壁を傷つけてしまうのだ。毛細血管はボロボロになり、太い血管であっても、傷ついた内壁にコレステロールが付着し、血管壁が分厚くなって動脈硬化を引き起こしてしまう。血液は全身を流れているもので、血糖値が高くなると、当然全身の血管に悪影響を及ぼすことになる。

では、糖尿病にかかってしまった場合の症状について説明しよう。

糖尿病初期の症状としては、喉の渇き、体の疲れがとれない、だるさを感じる、食事の後に強い眠気を感じる、立ちくらみがする、手先や足先がしびれる、体のむくみ、トイレの回数が増えるなどだ。

これらの症状はいずれも自覚しにくく、糖尿病の初期段階だと分かりにくいものばかりである。そのため、自分が糖尿病だと気づくのは、多くの場合、健康診断や人間ドックなどで血液検査を受けた結果、医師から指摘されたときである。その頃にはある程度病気が進行してしまっているケースが多く、これが糖尿病の怖い点である

 

様々な合併症に注意

 糖尿病初期の段階で対策をせずに、そのまま病気が進行をしてしまうと、様々な合併症を引き起こすことになる。糖尿病の恐ろしさはここにある。代表的な合併症を紹介しよう。

①糖尿病網膜症

眼球の奥には、カメラのフイルムに相当する網膜があり、光を感じる神経細胞がある。これらの細胞に血液を巡らせるための毛細血管が、高血糖によってボロボロになり、出血を起こす。糖尿病が原因の網膜症による失明者は年間約3千人にも及ぶという。

②糖尿病神経障害

高血糖が長く続くと、ソルビトールと呼ばれる物質が神経細胞に蓄積し、それが原因で神経に異常を起こす病気である。手先や足先にピリピリとした痺れ、ジンジンする痛みが現れたり、または感覚が鈍ったりすることもある。

③糖尿病腎症

腎臓は血液をろ過し、不要な物質を尿として排泄するための役割を持つ臓器である。腎臓の内部は毛細血管の塊であるが、高血糖によりそれらが破壊されてしまう。それが糖尿病腎症であり、末期には人工透析が必要となってしまう。人工透析になる原因の第1位が糖尿病であるという。

④脳卒中

先に説明したように、高血糖の状態が続くと動脈硬化を引き起こし、脳内の血管が詰まる脳梗塞や血管が破れてしまう脳出血などを起こす原因となる。

⑤狭心症・心筋梗塞

心臓には、心臓自体に血液を巡らせるための「冠動脈」が存在する。その動脈が詰まってしまうと、その部分に血液がめぐらなくなり、最悪の場合は心臓の組織が壊死してしまい、死にも至る恐ろしい病気である。

⑥足の壊疽

糖尿病神経障害が進行すると、足の感覚が鈍り、傷や火傷を負ってもすぐには気づけなくなってしまう。また高血糖により抵抗力も弱まり、感染症も進行しやすくなる。さらに足の血管がつまり、充分な栄養が行き渡らなくなり、悪化すると足が壊疽してしまうのだ。年間1万人以上の人が、糖尿病によって足を切断しているという。

 

生活習慣改善のポイント

最後に、糖尿病を防ぐための生活習慣改善ポイントをまとめてお伝えしよう。

①バランスの良い食事

白米などの主食の採りすぎに注意する。肉や魚などの主菜は1食1品程度に抑え、野菜などの副菜を多めに採るようにする。副菜は1日5皿が目安。

②ゆっくりよく噛んで食べる

早食いは食べ過ぎの原因になる。よく噛んで腹八分目にとどめること。

③甘いものやアルコールを控える

お菓子や酒は血糖値のコントロールを乱してしまう。

④薄味を心がける

味付けが濃いと、白米などの主食を多く採りすぎてしまう。

⑤規則正しい生活を心がける

早寝早起きで充分な睡眠時間をとり、1日3食の食習慣が血糖値のコントロールを良くする。

⑥体重を減らす

減量は糖尿病予防の第一歩である。

⑦体を動かす

無理な運動は禁物。息がはずむ程度の有酸素運動(ウォーキングなど)を1日30分を目安に行う。筋肉がつき、代謝がアップすると血糖値のコントロールも良くなる。

⑧禁煙と歯槽膿漏の予防

喫煙、歯槽膿漏は糖尿病を悪化させる原因となる。

 

糖尿病の90%を占める2型糖尿病は、以上のようなポイントを守ることで避けることができるので、せひ参考にしていただきたい。もちろん血液検査で高血糖を指摘された場合には、早めに専門医にかかることが重要だ。(老友新聞社)

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