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コラム

2019年04月16日

5月1日新元号「令和」へ…変えてゆくべきもの、伝え残すべきもの<市田ひろみ 連載34>

京都の11月は、どこへ行っても紅葉を追う人で、車も人も、異様な混雑ぶりだった。どこへ行っても入場まで1時間、2時間待ち……それでもやっぱり見てみたい衝動の風景。今年は特に赤が美しかった。
でも少しずつ紅葉の降る初冬。どこの家でも、紅葉の落葉を竹ぼうきで掃除する人の姿が見られる。もう、掃いても掃いてもきりがなく、紅葉の落葉はすっかり森を枯らすまで続く。

11月21日。京都東急ホテルでおもしろいイベントがあった。
関西東急会による「京都千年文化の道」というもの。内容は、映画ファンならうれしいもの、というより、京都ならではの内容だった。私は「市田ひろみの世界」というテーマで、私の映画人生を語った。

最後に、映画監督の中島貞夫さんとの対談。
京都にはかつて太奏(うずまさ)という、日本のハリウッドと呼ばれる映画の都があり、日本の国民から、戦後どれだけ庶民の娯楽として支持があったことか。
今も時代劇のDVDは人気があり、日本移民の多かったブラジル、ペルーなどでは何回も見られる。
「すり切れる位?」
「セリフを覚える位?」
それくらい見るのだそうだ。
たてその映画の殺陣師のショーが素晴らしかった。殺陣師・清家三彦氏と七人の仲間によるショー。たくさんの時代劇を作ってきた東映には、殺陣の技術が生きている。数々の映画、テレビの経験を経て、殺陣の技を披露している。一瞬の技と形式美の集約だ。
数えきれない時代劇を支えた日本の伝統文化。結髪、着付、化粧、作法、殺陣などを守り続けている少数派の人達。しかし高齢な人々にとっては、すでに後継者を育てる場がないのだ。

京都は花街があり、芸妓、舞妓の装いは定着した感があり、祇園あたりはカメラを持った外国人があふれている。芸妓、舞妓の姿を一目見ようとする人達である。

私は半世紀前、大映京都の撮影所で一年間、女優として時代劇の娘役の経験を持つが、結髪は一人の日本髪を結い上げるのに15分から20分の神業だ。
会場を埋めた400人の人々も、殺陣の実演を見ながら、かつてスクリーンで楽しんだ時代劇に思いをめぐらせていたのではないだろうか。

時代は文化をとり残して足早に過ぎてゆく。日本人の心の中に、かつての日本の姿を求めるのは無理なことか。
現代の婚礼は、洋装7割、和装3割。しかし、和装と言えども、打掛に高島田ではなく、洋髪。前もって打ち合わせをして、打掛に似合うヘアースタイルのリハーサルをして「前撮り」といって、写真撮影もする。
私はいつも打掛に高島田がきっと似合うのにと思いつつ、時代の流行という風に流れてゆくものだ。
打掛に角かくし、白無垢に綿帽子など。残してほしい東映の時代劇復活への思いは、同時に日本文化への郷愁かもしれないが。

2019年4月30日、天皇皇后御退位。5月1日新天皇が御即位。皇室が、また日本の伝統文化も大きく姿を変えてゆくのか。
平成から大きく時代が変わることだろうと思う。でも日本人として失ってはいけないものをしっかりと見つめてゆきたいものだ。
(本稿は老友新聞本紙2018年1月号に掲載した当時のものです)

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市田 ひろみ
  • 服飾評論家

重役秘書としてのOLをスタートに女優、美容師などを経て、現在は服飾評論家、エッセイスト、日本和装師会会長を務める。

書家としても活躍。講演会で日本中を駆けめぐるかたわら、世界の民族衣装を求めて膨大なコレクションを持ち、日本各地で展覧会を催す。

テレビCMの〝お茶のおばさん〟としても親しまれACC全日本CMフェスティバル賞を受賞。二〇〇一年厚生労働大臣より着付技術において「卓越技能者表彰」を授章。

二〇〇八年七月、G8洞爺湖サミット配偶者プログラムでは詩書と源氏物語を語り、十二単の着付を披露する。

現在、京都市観光協会副会長を務める。

テレビ朝日「京都迷宮案内」で女将役、NHK「おしゃれ工房」などテレビ出演多数。

著書多数。講演活動で活躍。海外文化交流も一〇六都市におよぶ。

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