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コラム

2021年04月07日

笑顔でさりげない一言こそ一番有効なコミュニケーション手段

(本稿は老友新聞本紙2019年9月号に掲載した当時のものです。)

私にも小さな恋人がいる。弟の子供の4歳(美島)と1歳(花人)だ。
子供は正直だ。これまでは、私が顔を近づけて話しかけても、横を向くばかりで嬉しい顔もなかったが、この頃はにっこり笑てくれる。やっと私をみとめてくれたのだ。

笑顔は、すべての言葉を語る。
今、笑顔のシンデレラと騒がれているのが岡山県出身の渋野日向子さんだ。全英女子オープンで、見事初優勝。なんてったって、20歳の少女が、並居る強豪を初優勝で押さえたのだからびっくり。
それも天真爛漫の笑顔で楽しんで、このビッグタイトルを獲得できた。
私もびっくりしたけれど、駄菓子を食べながらのゆとり。

ゴルフは、今や男子だけのものではないし、女子選手もインターナショナルのスコアだ。
しかしこの日向子さんの明るさと笑顔の前に、理由はいらない。
ゴルフ場で駄菓子を食べても良いというのは知らなかった。おじさんのスポーツと思っていた私は古い。

そういえば、スポーツの世界では、男子のスポーツと勝手に思っていた柔道やレスリング、マラソンなど、すでに女子の活躍が目立っている。
その日までの努力があって優勝を勝ち取って、帰国した日向子さんはそのキャラクターでも好感を持たれた。

笑顔といえば、かつてきんさんぎんさんの百歳も騒がれたものだ。
元気印の百歳は、見ていても励みになる。

京都では、家庭の躾の中で
「女の子はいつもにこにこしてなあかん」
というのがある。
つらいことがあっても、そんな時ほど
「何も辛いことないのえ」
と笑顔。
笑顔がなければ暗い個性、陰気な人柄を思われて、人生大きな損をする。
昔から「女は愛嬌、男は度胸」なんて言うと、フェミニズムの人達から叱られそうだけど、この間、管理人に頼んで電球換えてもらった。お互い様だ。

ところで我が家の近くに、年齢八十位の品の良いおじいさんがいる。いつもおだやかな笑顔だ。偶然、私に出逢うと
「市田さん。風邪ひいてませんか?」
「昨日も38度、気を付けて下さいね」
おじいさんはにこにこしながら短いフレーズで一言二言声をかけて通り過ぎる。
この一言に、季節や世情が入っている。
最初は私のファンだと思って、私も一言挨拶をしていたが、どうやらそうではないらしい。
夕方、帰ろうと思って一階へ降りたら、丁度おじいさんがバス停に向かっていた。
「お水飲んで下さいね。飲みたくなくても、水分補給ですよ」
と、ベンチに背を丸くして座っている超おばあさんに声をかけていた。
私のファンと思っていたのは間違いで、おじいさんのボランティアだったのだ。
私は「ささやき」おじさんと名付けた。

知らない人に声をかけるというのは、日本人の一番不得意のところだが、さりげなく笑顔でひとことというのは、実は高齢社会で一番有効なコミュニケーション手段であり、慣れてゆけばその人の人生の中からささやきの珠玉の言葉が出る。
毎日熱中症を心配しての日々だけど、小さな子には外出は控えて室内で遊んでほしい。
それにしてもあつおすなあ。

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市田 ひろみ
  • 服飾評論家

重役秘書としてのOLをスタートに女優、美容師などを経て、現在は服飾評論家、エッセイスト、日本和装師会会長を務める。

書家としても活躍。講演会で日本中を駆けめぐるかたわら、世界の民族衣装を求めて膨大なコレクションを持ち、日本各地で展覧会を催す。

テレビCMの〝お茶のおばさん〟としても親しまれACC全日本CMフェスティバル賞を受賞。二〇〇一年厚生労働大臣より着付技術において「卓越技能者表彰」を授章。

二〇〇八年七月、G8洞爺湖サミット配偶者プログラムでは詩書と源氏物語を語り、十二単の着付を披露する。

現在、京都市観光協会副会長を務める。

テレビ朝日「京都迷宮案内」で女将役、NHK「おしゃれ工房」などテレビ出演多数。

著書多数。講演活動で活躍。海外文化交流も一〇六都市におよぶ。

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