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医療と健康

2025年06月20日

梅雨時 食中毒にご注意

じめじめと蒸し暑い日が続くようになり、保存しておいた食材が傷みやすくなる季節。この時期になると心配なのは食中毒だ。とくに高齢者は体力や免疫力が低下しており、食中毒にかかりやすく、また重症化しやすくもある。今月はこの時期起こりやすくなる食中毒について、その予防法を中心にまとめてお伝えしよう。

 

食中毒の原因

気温や湿度が高まる今の時期、細菌やウイルスが繁殖しやすくなり、それに伴い食中毒の発生件数が増加する。厚生労働省の統計によれば、令和6年には1037件の食中毒が発生し、患者数は1万4千229人となっている。入梅時期や夏場は気温・湿度が高いため、食品が腐りやすくなり、病原菌が繁殖しやすくなるため、とくに食品の取り扱いや保存方法、そして調理法にも十分に注意することが大切だ。

食中毒の原因は多岐にわたるが、主に「細菌」「ウイルス」「自然毒」「化学物質」「寄生虫」の5つに大別される。とくに多くを占めるのが細菌性の食中毒で、代表的なものにはサルモネラ菌、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌(O―157)などがある。これらの細菌は、加熱が不十分な肉や生の卵、そして細菌に汚染されたまな板や包丁、食器などを通じて体内に入り、腹痛や下痢、嘔吐、発熱などの症状を引き起こすのだ。

ウイルス性の食中毒は冬場に多く、中でもノロウイルスは感染力が非常に強く、ごく少量のウイルスでも発症する。感染経路は、感染者の手を介した食品や調理器具、さらには飛沫による二次感染など多岐に渡る。家庭内や高齢者施設内で集団感染を引き起こすことも少なくない。

また、専門的な知識がなく山でキノコ狩りなどをした際、誤って毒キノコを食してしまったり、料理屋がフグの毒の処理を誤って、食中毒を発生させてしまう「自然毒」によるものや、農薬や洗剤などの「化学物質」、そして魚介類に潜む「寄生虫」も食中毒の原因になる。魚に寄生する「アニサキス」による食中毒というのもニュースなどでよく耳にするだろう。これらは原因が特定されやすい反面、誤って摂取した場合には命に関わる危険性もあるため、特に注意が必要である。

食中毒は、日常のあらゆる場所、あらゆる時にその発生の危険が潜んでいるものだ。しかし、その多くは正しい知識と日頃の注意によって予防することが可能である。では、どのような状況や条件で食中毒のリスクが高まるのかについて詳しくお話しよう。

食中毒のリスクが高まる状況

 食中毒は特別な環境で発生するものではなく、身近な生活環境でも容易に起こりうる。先にも述べたが、とくにリスクが高まるのは細菌やウイルスが繁殖しやすい高温多湿の梅雨から夏にかけてである。気温が20℃以上、湿度が70%を超えるような環境で細菌が活発に増殖するので、室温に長時間放置されたパンや調理後の食材などが知らぬ間に菌の温床となることも少なくない。

また、手洗いや調理器具、食器などの消毒が不十分な場合、家庭内や施設内で集団感染につながることもある。とくにウイルス性の食中毒の場合、感染源となるのはむしろ感染者の手や唾液などを介した「人から人」への伝播であるため、調理や配膳に関わる人の体調管理も重要になる。

食材の扱い方や調理環境にも大きく関係する。例えば肉や魚などの生鮮食品と、加熱済みの食品や野菜を同じまな板や包丁で扱うことは、菌の交差汚染の原因になる。また、一度解凍した後に再冷凍して長期間保存した食材や、常温で長時間保存した調理済みの料理も、細菌の増殖を招きやすくなる。

以上のように、気温や湿度、衛生状態、個人の体調など、さまざまな要因が食中毒のリスクを高める。逆にリスクを理解することで、日常生活の中で具体的に注意すべきポイントも分かってくるだろう。最後に、家庭内で実践できる具体的な予防策について紹介しよう。

家庭でできる食中毒予防

食中毒を防ぐうえで最も大切なのは、日常生活の中での「ちょっとした習慣」である。とくに家庭内では、調理や保存の仕方に気をつけることでほとんどの食中毒を未然に防ぐことができるという。ここでは食中毒予防の基本である「つけない」「増やさない」「やっつける」の3つの視点から、家庭内でできる具体的な対策について紹介しよう。

まず、「つけない」とは、食品に細菌やウイルスを付着させない工夫である。最も基本であり、かつ重要なのが手洗だ。調理前、肉や魚を扱った後、トイレの後などは、石けんを使って丁寧に手を洗うこと。また生の肉や魚、卵などを扱う調理器具(まな板・包丁・ボウルなど)は、野菜や加熱済みの食品と使い分けることが大切である。どうしても同じ器具を使う場合は、その都度しっかりと洗浄・消毒を行うこと。

次に、「増やさない」とは、食品に付着した菌を繁殖させないための保存・管理方法のこと。生鮮食品は購入後すぐに冷蔵・冷凍保存し、室温に長く置かないことが鉄則である。車でデパートに食材を買いにゆき、車のトランクに購入した食材を入れたまま他の買い物をしたりすると、トランクの中で菌を増殖させてしまう。特に夏場は調理後の料理でも2時間以内に冷蔵庫に入れることが推奨される。また、冷蔵庫の温度は10℃以下、冷凍庫はマイナス15℃以下を保ち、詰め込みすぎないことも意識すること。

最後に、「やっつける」は、加熱によって菌やウイルスを死滅させる方法である。多くの細菌やウイルスは、食材の中心温度75℃で1分以上加熱すれば死滅するという。見た目が火が通っているようでも、中までしっかり加熱されているか確認することが大切だ。電子レンジを使用する際は、ムラなく加熱されるよう、容器の配置やかき混ぜ方に注意をする。加熱後の料理を長時間放置することも菌の繁殖につながるため、なるべく早めに食べきるか、保存する場合は冷蔵庫で管理すること。

以上のように、日々のちょっとした注意と工夫で、家庭内の食中毒リスクを大幅に下げることができる。高齢者や体力の落ちている方と同居している家庭では、とくに衛生面に気を配ることが重要である。

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