医療と健康
息が苦しくなる…だけではない。COPDの怖さ。

本紙でも何度か取り上げているCOPD。慢性閉塞性肺疾患というもので、肺の生活習慣病と呼ばれることもある、非常に患者数が多い疾患だ。今回はあらためてCOPDというのはどんな病気なのか、その怖さや治療についてまとめてお伝えしよう。
COPDの肺は
ゴムが伸びきった風船のよう
階段を上る際に苦しくなり、途中で休まなければならなかったり、自分と同じくらいの年齢の人と比べて、歩行速度が遅いと感じたりする人はいないだろうか。「歳のせいだから」と我慢していると、じつはCOPDである可能性がある。とくにタバコを吸っている人、またはかつてタバコを吸っていた人、そして日常的に咳や痰が出るという人は要注意である。
COPDとは、症状を簡単に説明をすると、呼吸がしにくくなる肺の病気である。人の肺を風船にたとえてみよう。空気の詰まった風船は、手を離すだけで中の空気は外へと吐き出される。これは風船のゴムの収縮力が働くためで、人の手で押しつぶさなくても自然と空気は外へと押し出される。逆に、風船の中へ空気を入れる場合には、ふーっと力を入れて押し込まなければならない。
人の肺も同じで、力を抜いた状態ではしぼみ、空気を体の外へ吐き出す。そして力をいれて空気を吸い込んだときに膨らむ。このように呼吸というものは、力を抜いたときに息を吐いて、力を入れ、努力をしたときに吸い込むのである。健康な人の場合は、呼吸をする動作というものをあまり意識しないものだが、よく注意をしてみると、息を吐き出す際には力は必要ないことが分かるだろう。
ところがCOPDになると、ゴムが伸びきった風船のような肺になってしまい、縮む力が弱くなってしまう。そうすると、ただ力を抜いただけでは息を吐き出すことができなくなってしまうのだ。
呼吸がしにくくなる
喫煙者の2~3割が罹患
また、人によっては肺だけではなく、気道も狭くなってしまい、呼吸がしにくくなる場合もある。これは、息を吐くときに気管支の弁は自然と開いて空気を通りやすくするのだが、気管支の弁は肺の動きと連動しており、COPDになるとその仕組みも壊れてしまい、気管支が狭くなってしまうのだ。
このような仕組みで、COPD患者というのは、息を吐き出しにくくなってしまう。息を吐き出せないということは、つまり新しい空気を吸うこともできなくなってしまうので息苦しくなるのだ。COPDとは、このような特徴を持つ肺の病気なのだ。
肺の病気で息苦しくなる病気というと、ほかにも喘息というものがあるが、COPDと喘息とがもっとも異なる点は、喘息はアレルギーなどが原因で、一時的に呼吸が苦しくなる病気である。それに対しCOPDは常に息苦しさを伴うのだ。
では、このCOPDという病気、日本にどれくらいの患者数がいるかというと、50歳以上の10%の人がCOPDであるといわれ、その数は500万人にもなる。COPDはタバコ病とも言われるが、喫煙者の20%~30%もの人がCOPDになるという。
これだけ患者数の多いCOPDであるが、周りを見渡してみると、それほど呼吸困難で苦しんでいる人の数というのは多いようには見えない。しかし、それがCOPDの厄介な点でもある。実は、COPDの患者の大半は軽症であったり、中程度の症状で留まっており、自覚症状のない人たちなのだそうだ。さらにCOPDの症状というのは、咳や痰がでるといったものが主なもので、これは単なる風邪とか、歳のせいにされがちで、病院にかかる人が少ないのだという。本当に苦しくなり、病院に駆け込んだ段階では、すでに重症になっていることも少なくない。
COPDが重症化するととても恐ろしい。呼吸困難になるのはもちろん、その影響は全身にも及ぶのだ。呼吸が繰り敷くなるために食欲が落ち、体力、筋力が低下、さらには骨粗鬆症も招く。そして心血管疾患、心筋梗塞、狭心症、脳血管障害などにも関連するという。またインフルエンザや肺炎球菌などのウイルスにも感染しやすくなる。
COPDの治療法
まずCOPDの検査だが、一般的な健康診断で行われている胸のX線撮影では発見しにくい。そのため、CTを使った肺の検査を受けることが望ましい。もうひとつ、スパイロメトリーという検査がある。肺活量の検査と似ているが、肺のそう容量だけではなく、1秒間にどれだけの空気を一気に吐き出せるのか、吐き出す速度も測定をすることで、気流閉塞が起きていないかどうかを診断することができる。CT検査よりも手軽に受けられるのが良い。
治療に関しては、喫煙者の場合には、まずは禁煙をすることが大前提である。そして吸入タイプの薬物で治療をしつつ、体力維持の為に、ウォーキングなどの軽い運動を行うようにするのだそうだ。
COPDは重症化すると、在宅酸素療法といって、つねにボンベを持ち歩いて酸素を吸入しなければならない状態になることもあり、生活の質が著しく低下してしまう。煙草をやめたくてもやめられないという人は、一度禁煙外来を受診してはどうか。
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