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三遊亭ぽん太の下町寄席からこんにちは!

三遊亭ぽん太の下町寄席からこんにちは!

2023年04月26日

連載20「花と落語」

新緑が鮮やかで花々が美しく咲き誇る季節になりましたね。
自分らしく無い書き出しに自分で驚いていますが、案外花を見に行くのが好きなぽん太です。
都内ですと新宿御苑、向島百花園、神代植物公園、また各種庭園におでかけします。
一時、新宿御苑の年間パスも持ってました(笑)
また神社仏閣なんかもいいですね。
我々五代目円楽一門会が平日昼に興行を打っております亀戸梅屋敷という観光施設内には藤の花が咲いており、また近くの亀戸天神では梅、藤、菊が有名で観光の目玉になっています。
しのぶ亭近くの根津神社では現在つつじまつりが絶賛開催中です。

落語にもよく花が出てきます。
代表的なのはやはり桜。
お花見のネタはたくさんあります。
『長屋の花見』、『花見の仇討』、『花見酒』、『百年目』、『あたま山』などなど。
江戸時代の花見の場所ですが、上野は寛永寺があり幕府禁制の場所だったので庶民の賑やかな花見は禁じられていました。
大抵、向島が舞台です。
今も界隈は長命寺のさくら餅で有名ですし隅田川沿いなどは実にきれいです。
ただ現在メインで咲いているソメイヨシノという品種が出来たのは江戸末期で、昭和の高度経済成長期に各地に植えられたそうです。
この木は自分で繁殖出来ないため、一つの木から接ぎ木によって増やします。
すべて同じDNAなので同じタイミングで咲いて同じタイミングで散ります。
昔はこの品種は無く様々な種類の桜が植えられていたので現在の花見とはちょっと趣が違ったかも知れません。

江戸時代、亀戸には臥竜梅という有名な梅があり、これは『怪談牡丹燈籠』に登場します。
『やかんなめ』というネタにも梅見が出てきますが、その舞台は向島。
向島周辺には小梅という町名がかつてあり、その名の通りの梅の名所だったようです。
向島や亀戸のある現在の墨田区、江東区周辺は昔は田園地帯で梅や桜もそうですが色々な木々が生え花も咲き風光明媚な場所だったのでしょう。
江戸の市街地からちょっと離れているのでこのあたりに遊びに行くのは今なら高尾山で遊ぶ、くらいの感覚でしょうか。

また私も好きでやる『鼓ヶ滝』という歌人・西行が主役のネタがあります。
若い頃の西行が有馬温泉近くの鼓ヶ滝という滝で和歌をこしらえたところ田舎のお年寄りたちに直される、という噺なのですが、この歌の中にタンポポが出てきます。
伝え聞く鼓ヶ滝に来てみれば沢辺に咲きしタンポポの花
これが直されまして
音に聞く鼓ヶ滝をうち見れば川辺に咲きしタンポポの花
春のまだ少し肌寒い時期ながらも滝のそばで健気に咲くタンポポの姿が浮かんできます。
実は直したのが和歌三神という神様達だったというオチなのですが、さすが神様と名人の合作です。
名人と言えば五代目柳家小さん師匠が「落語は季節感と情景と人物が描ければ自然と面白くなる」という言葉を残しています。
至言ですが、めちゃくちゃ難しい…
小手先のギャグに頼らず、空間を浮かび上がらせて観客と時間を共有する。
落語にはシンプルに大笑いを求めるだけではなく聞いていてホッコリとしたり、言葉遊びでニンマリしたり、一緒に情景を思い浮かべてもらったりと色んな楽しみ方があります。
この西行の歌からも春の情景が浮かんできますし、ネタ自体を語る事で複層的に春の爽やかな雰囲気を味わってもらえたらと拙いながらも心がけております。
花を見て落語を思い出し、また落語を聞いて日本の豊かな四季を思い浮かべる、なんという楽しみ方をして頂けたら幸いです。
落語も花も最後はオチ、ますので。
ということでまた来月!

三遊亭ぽん太スカイツリーと墨田川の向島側の桜

お知らせ

三遊亭ぽん太

三遊亭ぽん太の月例落語会
ぽん太ラボvol.37~真景累ヶ淵連続口演編~
日時・6月3日(土)14時開演
会場・池之端しのぶ亭
料金・予約1500円、U25割1000円、ぽん太初めて割500円
ご予約、お問合せ・pontathe2nd@gmail.com

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三遊亭ぽん太
  • 三遊亭ぽん太
  • 落語家
  • 1985年2月24日生まれ / 愛知県名古屋市出身 / 法政大学社会学部卒 / 2015年2月に三遊亭好楽に入門、前座名「好也」 / 2018年11月二ツ目に昇進「ぽん太」を襲名 / 現在、持ちネタは古典新作合わせて140席以上ある
  • ぽん太さんのHP
    https://pontathe2nd.amebaownd.com/
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