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2022年02月25日

「体と心の両方の健康を維持して新たな可能性を見出していきたい」ソウルオリンピック100M背泳ぎ金メダリスト 鈴木大地さんに聞く「私の健康法」

―今回は1988年開催ソウルオリンピック100M背泳ぎ金メダリストであり、現役引退後も初代スポーツ庁長官などを歴任された鈴木大地さんにご登場いただきます。現在、国際水泳連盟理事、日本水泳連盟会長や、順天堂大学スポーツ健康医科学推進機構 機構長を務められ、スポーツの普及や指導、研究など様々な分野でご活躍中の鈴木さんに、ご自身の健康法やストレス解消法などについてお話を伺いました。

自分なりのストレス発散法
を持つ事が一番重要ですね

今、様々な仕事をさせていただいている中で、メンタルヘルスの重要性を改めて気づかされましたね。一日仕事を終えて、「今日はよくやった!最高!」と言える日は意外と少なくて、ストレスだけがたまっている状態なんです。あの時こうすればよかった、ああすればよかったとか、後から思い返すんです。これは様々なビジネスの場面で沢山あると思うんです。そういう時にどうするか。

ナイキの創業者フィル・ナイトさんが書いた本を読んだのですが、むしゃくしゃした時には10マイルとか、1時間とか走って、一度頭を真っ白にして嫌な事を忘れるんだそうです。

ストレスの発散法とか対処法って人それぞれだと思いますが、これって大事なんだと思いますよね。スポーツ選手って、筋肉を付けたり有酸素運動したり、これは基本中の基本だと思いますが、メンタルをどうやって保つのか。

私自身も、こう見えても結構ナイーブで落ち込んだりすることもあるんですが、それでも次の日には忘れるようにしています。私の場合、運動で発散するのが一番良くて、普段はジョギングだとかウォーキングとかでストレスを発散していたのですが、実は7月に足首を骨折してしまいまして、まだ完治していないんです。そのためあまりスポーツができなくて、それ自体がストレスになっちゃいますよ。せいぜい子供とプールに行って、自分が泳がずに子供に教えるだけ。今は忍耐の時期ですね。

手作りの野菜ジュースに
快適な睡眠が健康の秘訣

自分の健康に気を付けている事といえば食事ですね。毎朝手作りの野菜ジュースを飲んでいます。私か妻か、どちらか時間がある方が作って、長男も一緒に飲んでいます。それで、食物繊維は摂るようにしています。

肥満というのは結局、エネルギーの摂取量と消費量の差異です。昔はいくら食べても太れなかったんです。なにしろ何時間も泳ぎ続けるわけですから消費するエネルギーもすごい。でも今はそれほど消費がないので、摂取して余ったエネルギーは体に蓄積されますよね。通常は食べた分はきちんと発散するようにしています。同じダイエットでも食べたいものを我慢するのではなく、食べたいものは食べて、その代わりに食べた分だけ動くというライフスタイルを維持したいですね。我慢するというのは結局ストレスになりますから。

もうひとつ気を付けているのは睡眠です。以前は眠るときにエアコンは使わないようにしていたのですが、それだと夜中に暑くて起きてしまうこともありました。快適な睡眠のためには快適な室温を保つのが良いという事で、最近はエアコンを利用して室温をキープして寝るようにしています。腰痛のためのマットレスとかにも気を配るようになりました。

趣味で尺八も楽しみます
スポーツと音楽の共通性

今、趣味で尺八を吹いているんです。以前外国にいた時にはサックスをやっていたのですが、日本に帰ってきて、あるときインターネットで、たまたま尺八の音を聞いたのですが、なんていい音色なんだろうって思いました。サックスもいいけれど、やはり日本人なので和楽器もいいんじゃないかなって興味を持ったんです。偶然にも私が良くいく場所の近くに尺八の工房があって、思い切ってそこを尋ねてみたんです。そうしたら「鈴木大地さん!?」と訪問したことで驚かれて喜んでいただき、ご好意で尺八を一本、長期的に貸してくれることになったんです。これも何かの縁かなと思って始めたんです。うちの息子も三味線をやっているんです。将来は尺八と三味線でコラボできたら面白いですね。

音楽って、スポーツと似ているって思うんです。コツコツとやって上達するという部分がね。自分の努力次第でどうにでもなるところがあるじゃないですか。自分も、コツコツやれば上達するっていう事を水泳で知っていますので、きっと同じなんだろうなって思います。

ちょっとした病気や怪我で
健康が一番だと感じます

人間って、健康であればなんでもできると思うんです。逆に、ちょっとした病気や怪我でも、とても不自由な思いをします。右足首の骨折をして、一時は車いすや松葉杖の生活になりましたが、自分でドアを開けられないとか、荷物を持てないとか、ほんの少し骨が欠けたくらいで、これだけ行動が制限されて不自由な思いをするんです。改めて健康が一番大事だなって感じました。

今、ひとつ考えていることがあるんです。高齢者で寝たきりの人とか、ずっと病床に臥せっている人がいらっしゃいますよね。とくに大きな疾患がなければ、そういう人こそプールに来てくださいって言いたいんです。水の中だと転ばないし、寒冷刺激というもので体が活性化しますし、寝たきりの方に掴まりながらでもプールで歩いていただくと、劇的に改善するのではという仮説を立てています。大学のパーキンソン病の研究者の話でも、水に入って歩くと不思議と寝たきりの人が歩けるようになるということがあるらしいんです。そういう社会的意義のある研究などもこれからしていきたいと思っています。水のもつ力っていうのを、もっと考えていくべきだと思います。

私も50歳を過ぎて人生後半戦になってきました。恰好いいことではないですが、新たな自分というのをもっと探ったり発掘したり、可能性を見出していきたいと思っています。まだまだ挑戦していきたい。そのためには、体と心の両方の健康を維持していく事が一番大事だと思いますね。(談)

■鈴木 大地(すずき だいち)さん
1967年生まれ。千葉県習志野市出身。
1988年ソウルオリンピック100M背泳ぎ金メダリスト。
2016年にアジア水泳連盟副会長に就任、2017年からは国際水泳連盟理事を務め、2021年6月からは日本水泳連盟会長に就任された。
水泳に関する内容を中心とした著書多数、TV番組のコメンテーターなどでもご活躍中。

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