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コラム

2021年09月30日

「お医者さん」~私たちの生活を支えてくれている人達

(本稿は老友新聞本紙2020年6月号に掲載した当時のものです)
朝も昼も夜も、夜中も!新型コロナウイルス。
コロナはひとつのテーマで世界をつつんだ。
毎日感染を続け、講演・理事会・パーティーなどを潰しながら拡大を続けている。
何といっても医学会の事や感染数のことなど、素人なりにわかってくると、日本の医療がいかに人手不足、技術不足、機材不足、事務職不足かもわかってきて、心配になってきた。
それでも夜も昼もなく診療をしてくださっているのを見ると、責務の大きさに同情が湧く。

A氏は内科の個人病院を経営していた。
80歳のA氏は、知人の病院を協力して診療もしていたが、もう引退するという。インターネットが使えないのだ。
A氏をはじめ、高齢の医師は触診の時代。「おなかが痛い」のも触診で診ることができた。経験の積み重ねだ。
しかし今は違う。映像の時代だ。文明の利器に追われたのだ。それが時代というものだ。
それが医学の発展につながるというのなら、更に効果的な進化を遂げるだろう。

しかし専門医の特別手当の安いのには驚いた。生命を救ってくれる人に、もう少し何とかならないのか。

     ◇

昭和の頃、呉服の全盛の時代。私も呉服の展示会に日本中を飛び回っていた。
戦後、箪笥の中がからっぽの頃、呉服は売れた。
戦争できものを失った人は、みんなきものが欲しかった。

その頃、一番良いお得意様は、院長夫人だった。病院長の奥様が展示会に来られるというと、最高の着物を買ってもらったものだ。今はそんな風景は見られない。
今は院長夫人が病院の受付を手伝ったり、朝、病院の玄関を掃いていらっしゃる風景を見たこともある。

老人ホームや高齢者施設も経営には苦難がある。
母が入居していたところへ迎えにいくのが、私の仕事の関係で遅くなった。6時からの夕食がすでにはじまっていた。
ケアさんは1人。40人の世話をしている。早い人はもう食事が終わって、ケアさんが片づけを始めている。

ワゴンに1人分の食事が残っていた。母の分だ。
「もういらないのかと思っていました」
危ないところで母の1食は助かった。
ケアハウスもいろいろだ。英国風のスタイルだった母はいろいろ耐えていることだろう。

ある時、3時のおやつタイムに紅茶が出たそうだ。母は
「お紅茶はティーカップに入れるものですよ。コーヒーはコーヒーカップで良いですけど」
そんなところでそんな事を言っても仕方がない。

元気な頃、婦人会の人とよくパーティーに行った。カラオケになると、母は英国国家(ゴッド・セイブ・ザ・キング)を歌っていた。
戦後、パンタロン(スラックス)が流行したが、ズボンは女性の穿くものではありませんと、穿かなかった。
母の人生の中には、英国式のライフスタイルがなじんでいるのだ。90歳を超えて、もはや変えられないものだ。

まさに「郷に入れば郷に従え」日本人の医者が、世界の各地で活躍しているのもコロナの番組で知った。優秀な日本人が人類に貢献してくれているのもうれしいことだ。
コロナが治りますようにと祈らざるをえない。
(本稿は老友新聞本紙2020年6月号に掲載した当時のものです)

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市田 ひろみ
  • 服飾評論家

重役秘書としてのOLをスタートに女優、美容師などを経て、現在は服飾評論家、エッセイスト、日本和装師会会長を務める。

書家としても活躍。講演会で日本中を駆けめぐるかたわら、世界の民族衣装を求めて膨大なコレクションを持ち、日本各地で展覧会を催す。

テレビCMの〝お茶のおばさん〟としても親しまれACC全日本CMフェスティバル賞を受賞。二〇〇一年厚生労働大臣より着付技術において「卓越技能者表彰」を授章。

二〇〇八年七月、G8洞爺湖サミット配偶者プログラムでは詩書と源氏物語を語り、十二単の着付を披露する。

現在、京都市観光協会副会長を務める。

テレビ朝日「京都迷宮案内」で女将役、NHK「おしゃれ工房」などテレビ出演多数。

著書多数。講演活動で活躍。海外文化交流も一〇六都市におよぶ。

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