高齢者のための情報サイト【日本老友新聞】

老友新聞
ルーペ

医療と健康

2023年12月21日

高齢者ほど罹りやすい「帯状疱疹」

最近、帯状疱疹に関するテレビコマーシャルをよく見かけるようになった。帯状疱疹の罹患者数は年々増えており、日本では80歳までに約3人に1人が帯状疱疹に罹患すると言われている。また日本人の90%以上が帯状疱疹の原因となるウイルスを体内に保有していることもあり、誰もが罹患する可能性のある病気なのだ。今月はこの帯状疱疹について詳しくお伝えする。

 

体内潜伏の水痘ウイルス
免疫機能低下で再活性化

帯状疱疹は、幼少期にかかる水疱瘡と同じウイルス(水痘ウイルス)が原因で起こる病気である。
幼少期に水痘ウイルスに感染すると、最初は水疱瘡として発症し、皮膚表面に赤い水膨れのようなものが全身に現れ、痒みや痛み、場合によっては発熱もしたりする。
水疱瘡は通常1週間前後で治るのだが、実は治ったように見えても水痘ウイルスは体の中の神経節などに長い間潜伏し続けるのだ。
潜伏したウイルスは普段は大人しくしているが、疲労やストレスなどが溜まり、体力や免疫機能が下がってしまうと、この時とばかりに再活性化して悪さを始めるのだ。これが帯状疱疹である。帯状疱疹にかかると様々な症状が現れる。以下に代表的な症状を挙げてみよう。

■皮膚の痛み
帯状疱疹になると、まず皮膚の表面にヒリヒリ、ズキズキするような痛みが現れる。人によっては針で刺したかのような強烈な痛み、火傷をしたような痛み、あるいは痒みを感じることもあり、症状の強さは個人差が大きい。重症の場合には体を動かすことも苦痛になったり、痛みで眠ることも出来なくなるほどで、入院治療となることもある。

■疱疹
帯状疱疹の最も特徴的な症状である。皮膚上に発疹や水疱(疱疹)が現れる。帯状疱疹は神経に沿って症状が現れるため、体の左右どちらか一方に、帯状に広がることが多い。とくに胸部や背中、腹部周辺に帯状に広がりやすく、場合によっては顔や首周辺にも現れる。

■合併症
帯状疱疹で厄介なのは合併症である。帯状疱疹は原因となる水痘ウイルスが神経に潜伏しているため、治癒した後でも痺れや神経痛、麻痺症状などが長く残ることもある。また、帯状疱疹が顔の近くに現れた場合には眼や耳の神経にも感染し、角膜炎、結膜炎、耳鳴りや難聴といった合併症も発生することがある。

■発熱・頭痛
帯状疱疹が進行すると、発熱や体のだるさ、頭痛など一般的な風邪のような症状が現れることがある。
これらの症状はおよそ2~3週間で治まり、発疹や水疱もやがてかさぶたになるが、その後、シミや火傷の後のような傷が残ることもある。

ワクチン接種で発症リスクや症状も低減

もし帯状疱疹に罹ってしまった場合は、症状の重篤化、また合併症を防ぐために、早期に治療を開始することが重要となる。

帯状疱疹は投薬治療が中心となる。まずウイルスの増殖を抑制する抗ウイルス薬。これは原因となる水痘ウイルスの増殖を抑制し、症状の軽減や合併症のリスクを減少させる。それと並行して痛みを抑えるための鎮痛薬も使用する。また皮膚の水疱の状態によっては塗り薬を使用して症状を抑える。

帯状疱疹は、我々高齢者ほどかかりやすい病気である。高齢になると体力が衰え、免疫力も下がるため、水痘ウイルスが活性化しやすくなるので発症リスクが高くなる。また症状も重く、長引くことがある。そのため、高齢者は帯状疱疹の予防が重要だ。
主に50歳を過ぎたら帯状疱疹予防ワクチン接種の対象となる。ワクチン接種により、帯状疱疹に対する抗体を高め、発症リスクを低減し、また発症したとしても症状の軽減が期待できる。

帯状疱疹はワクチン接種だけではなく、日頃の生活習慣の改善によっても予防をすることができる。免疫力の低下によって発症するので、逆に免疫力を高めることによって予防につながるのだ。

免疫力を強化するために、まずはバランスの取れた食事を心がけること。そして十分な睡眠、休息をとること。また過度なストレスは免疫力の低下につながるため、ストレスを貯めないようにうまく発散すること。そしてウォーキングなどの適度な運動習慣を心がけること。

以上のように、健康的な生活習慣を送り免疫力をあげることで帯状疱疹の発症リスクを抑えることができる。そして高齢者は予防接種を受けることも大切だ。かかりつけ医にワクチン接種の相談をしてほしい。

 

髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

この記事が少しでもお役に立ったら「いいね!」や「シェア」をしてくださいね。

高齢者に忍び寄るフレイル問題 特集ページ

健康への不安や悩みはありませんか?

健康にまつわるご相談を募集しております。医療法人社団同友会理事長がわかりやすくお答えをいたします。

読者投稿の募集はこちら


日本老友新聞・新聞購読のお申込み
日本老友新聞・新聞購読のお申込み
  • トップへ戻る ホームへ戻る