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コラム

2021年12月13日

「ステイホーム」中の過ごし方

(本稿は老友新聞2020年9月号に掲載された当時のものです)
新聞もテレビも、あらゆるメディアは新型コロナウイルス一色だ。3月頃はまだその恐ろしさはイマイチぴんと来なかったけど、今では深い恐ろしさを感じている。

日本各地で、伝統やそれにまつわる工芸品など、貴重なものが姿を消し、何か手伝いの日をこまねいているばかりだ。
葵祭、祇園祭、時代祭と、京都を代表するお祭りは例年通りの開催ができず中止となった。大文字、そして鞍馬の火祭り……書き連ねても、その担当神社にはそれぞれ祭りを続けてゆく意味がある。

私の仕事も中止、日程変更と、スケジュール帳は再起不能になった。休業・休み・休み・休み……さて、何をするか……。
休みも、前もって休みと計画しているのなら、何とか楽しく「久しぶりの休み」となるだろうが、突然降って湧いたような休みの過ごし方、おまけにSTAY HOME。「お家にいなさい」ということだ。
一人住まいの私はたいして大きな洗濯物も無ければ、掃除も大掃除になるほどでもない。STAY HOMEときいた瞬間はほっとしたものの、何をすればよいのか。新聞も読んだけれど、ほとんどテレビの方が早い。

寺町通りもいつものように車の音。
これから夕方まで家にこもって何をするか。そうだ、源氏物語の朗読をしよう。
2008年に、源氏物語の成立千年を記念した行事で、十二単を着せながら源氏物語を語った。
これなら夕方までもつだろう。資料を持ち出して、久しぶりに源氏を読みはじめた。
天皇家の第一礼装である十二単。日本文化の深さはG8サミットの会場の空気を一変させ、圧倒した。

……と思ったその時、ベルが鳴った。宅配便だ。朗読を中止して玄関へ。荷物を取りに行く。
また朗読の続き。
電話が鳴った。だんだんイライラしてきた。

「五月の緑は美しい」
源氏物語は一向に進まない。
「樋口農園のトマト、いりますか?」
樋口のトマトは美味しい。

こうしてSTAY HOMEの午前中は過ぎた。

昼頃から本が読みたいと願っていたのに、そうこうしているうちに、あまり難しい古典はやめることにした。週刊誌にしよう。
コーヒーを入れて、山本一力の『あかね空』を読んだ。
しゃべらないことがこんなにしんどいのか。しゃべる、笑うを失ったら、ウツになってしまう。

自分から笑うようにしよう。面白くないのに笑ったら、あほらしくて笑ってしまう。
週刊誌の朗読。日本の歴史を作ってゆくのは週刊誌か。その情報はすごい。
午後からは笑う練習から。自分で小話を作っていった。
「だまってSTAY HOMEをしていたらウツになるよ」
なんとその後、とある大学教授が同じことを言っていた。私ってたいしたもんだ。
(本稿は老友新聞2020年9月号に掲載された当時のものです)

 

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市田 ひろみ
  • 服飾評論家

重役秘書としてのOLをスタートに女優、美容師などを経て、現在は服飾評論家、エッセイスト、日本和装師会会長を務める。

書家としても活躍。講演会で日本中を駆けめぐるかたわら、世界の民族衣装を求めて膨大なコレクションを持ち、日本各地で展覧会を催す。

テレビCMの〝お茶のおばさん〟としても親しまれACC全日本CMフェスティバル賞を受賞。二〇〇一年厚生労働大臣より着付技術において「卓越技能者表彰」を授章。

二〇〇八年七月、G8洞爺湖サミット配偶者プログラムでは詩書と源氏物語を語り、十二単の着付を披露する。

現在、京都市観光協会副会長を務める。

テレビ朝日「京都迷宮案内」で女将役、NHK「おしゃれ工房」などテレビ出演多数。

著書多数。講演活動で活躍。海外文化交流も一〇六都市におよぶ。

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