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コラム

2022年01月25日

はんこの役割

(本稿は老友新聞2020年11月号に掲載された当時のものです)

河野大臣。はんこに反対する態度はかなり重い。

どちらかと言えば、私ははんこにこだわっている方だ。
書道をたしなむ人は特にはんこ(印鑑)は伝統的な習慣だし、中国の古代の書でもはんこの役割は大きい。文字に対する印鑑の存在は、文字をたて、空間をたて、充分に役割をたてている。そして白黒の書の世界に朱のはなやかさ。
見慣れているのみならず、はんこの形状、文字、デザインと共に完全な調和を見せている。

ある日、書道でテレビの出演依頼が来た。うれしい。悠々だ。
打ち合わせにいそいそと出かけて行った。すると、なんとテストの文字が「魑魅魍魎」。
え?
長い間、書いていない。使わない文字。いや、書けません。
「もう少しランクさげて下さい」
「わかりました。」
こんどは『薔薇』。
いえー

私を躊躇させたのは筆順。昭和の初めと筆順が違うのだ。筆の運びに勢いがない。
ついに番組の出演は辞退することになった。
辛くも漢字は消えつつある。これと共にはんこも消えそうだ。

私はきものの仕事をしているが、きもののカテゴリーのなかに「小紋」というものがある。
型紙で染める友禅だ。小さな型の中に、美しく形成された文様がある。
きものの小紋も、きものの家紋も同じだ。小さな文様にデザイン性がある。それに朱肉も見事に効果を表している。
たしかにはんこ、朱肉など揃えるべき道具が必要だ。しかし、その手順こそ伝統だ。

洞爺湖サミットで、舞台で詩を書いた。
あかと、きいろと、しろの、モザイクのような雲があった。

遠い日。ブッシュ大統領の奥さん、ローラさんは
「美しい。ハンサムカリグラファー(特に素晴らしい)」
と褒めて下さって、ホワイトハウスにお送りした。
小さな日米交流だ。
はんこの役割は大きい。
(本稿は老友新聞2020年11月号に掲載された当時のものです)

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市田 ひろみ
  • 服飾評論家

重役秘書としてのOLをスタートに女優、美容師などを経て、現在は服飾評論家、エッセイスト、日本和装師会会長を務める。

書家としても活躍。講演会で日本中を駆けめぐるかたわら、世界の民族衣装を求めて膨大なコレクションを持ち、日本各地で展覧会を催す。

テレビCMの〝お茶のおばさん〟としても親しまれACC全日本CMフェスティバル賞を受賞。二〇〇一年厚生労働大臣より着付技術において「卓越技能者表彰」を授章。

二〇〇八年七月、G8洞爺湖サミット配偶者プログラムでは詩書と源氏物語を語り、十二単の着付を披露する。

現在、京都市観光協会副会長を務める。

テレビ朝日「京都迷宮案内」で女将役、NHK「おしゃれ工房」などテレビ出演多数。

著書多数。講演活動で活躍。海外文化交流も一〇六都市におよぶ。

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