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コラム

2022年08月24日

いさぎよさ

(本稿は老友新聞本紙2021年8月号に掲載された当時のものです)

ワクチン接種の順番に対して、なるほど、いろいろな意見があるものだ。
天皇も御心配なさっているのがしのばれる。ステイホームも限界だ。
某日、午後の番組5局が、ラーメンをテーマにしていた。
ロケが不可能な局にとって、コロナ、ワクチン、料理、名店しかとりあげようがないのはわかる。なつかしいドラマやサスペンスなども、故人の姿をしのばせてくれる。
その中から、歴史ものの番組を好んで選んで無聊を託っている。

たまに来る郵便は、仕事の依頼かキャンセルの便りだ。きわだって少なくなったのは、きものの仕事だ。
年一度、6月に行なわれたファッションカンタータは、今年も中止だ。JR西日本グループが、あれ程力を入れてくれていたダイナミックなショーを楽しみにしてくれていた全国のきものファンを、がっかりさせてしまうことになった。とても残念だ。
それどころか、時々きものを処分したいがどこへ行けばよいかという相談がある。
私は一切お世話しないことにしている。私も仕事柄、相当数のきものを着たが、私はたくさん弟子がいるし、チャリティーに協力することも多いので、私のきものはあちこちで第二の人生を生きている。
しかし、きものはいずれも思い出がついてまわる。きものにはそんな力がある。

一昨年、ファッションカンタータの楽屋に冨永愛さんが訪ねてくれた。私は彼女の大ファンだ。
もちろん、パリコレのモデルとして一流だが、彼女の理解の早さ、いさぎよさが好きなのだ。179センチという長身も、彼女にとってはコンプレックスだったらしいが、今では個性であり、モデルとしては有利だ。
結婚離婚の噂があり、彼女にとってはつらい経験だったろうが、彼女は見事に切り抜けた。
彼女には男の子がいるが「もう中学生だから」と、子供も難しい年齢を過ごして、自立させている。
私達高齢者は「石橋を叩いて渡る」など慎重なのは良いが、決断が鈍い。育った背景が違うが、彼女のいさぎよさが魅力なのだ。

アルマーニのコレクションが東京であった。あの最高のコレクションで冨永愛さんはメインのモデルを務めていて、アルマーニを喜ばせていた。
不要な贅肉をそぎとって、彫刻のような肉体。エレガントなウォーキング。品の良いフィナーレ。アルマーニもVIPとして見ているのだ。
年齢を越えて、彼女はモデルとして生きてゆくのだろう。

ところで、ワクチンは接種しましたか?
感染を防ぎ、重症化を防ぐワクチンをまだ打っていない人は、早く打った方が良いですよ。
百年に一度のウイルス。姿の見えないウイルスはいつまで私達を苦しめるのでしょうか?
つまらないデマや風評に惑わされていませんか?
自分のため、家族のため、友人のため。何千人もの人が犠牲になっている今日。多少のリスクはあってもメリットの大きいこと。
愛さんのようにいさぎよく、自分の決断をしてくださいね。
どれだけ多くの医師、医療関係者、ボランティアの人が、この見えない敵と闘っているか。
一人一人の努力といさぎよさが大きな力となって、コロナを収束させるのだと思う。
まだ迷っている人。あなたの生命がかかってますよ。

 

弊紙1面に「手から手へ」を連載いただいた市田ひろみ様が8月1日に逝去されました。2015年4月号から77回に渡りコラムをご執筆頂きました。生前のご厚情に深く感謝するとともに、故人のご功績を偲び、謹んで御冥福をお祈りいたします。   老友新聞社

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市田 ひろみ
  • 服飾評論家

重役秘書としてのOLをスタートに女優、美容師などを経て、現在は服飾評論家、エッセイスト、日本和装師会会長を務める。

書家としても活躍。講演会で日本中を駆けめぐるかたわら、世界の民族衣装を求めて膨大なコレクションを持ち、日本各地で展覧会を催す。

テレビCMの〝お茶のおばさん〟としても親しまれACC全日本CMフェスティバル賞を受賞。二〇〇一年厚生労働大臣より着付技術において「卓越技能者表彰」を授章。

二〇〇八年七月、G8洞爺湖サミット配偶者プログラムでは詩書と源氏物語を語り、十二単の着付を披露する。

現在、京都市観光協会副会長を務める。

テレビ朝日「京都迷宮案内」で女将役、NHK「おしゃれ工房」などテレビ出演多数。

著書多数。講演活動で活躍。海外文化交流も一〇六都市におよぶ。

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